一般に,治山事業の実施効果は,短期間では目で見える形で表現しにくいといえる。小山・奥村は,治山工事が実施された鳥取県内の山地小流域を対象として,事業着手前(1981年),事業完了直後(1983年)および事業完了後18年経過(2000年)のそれぞれの年代でタンクモデルを作成し,流出特性の変化を解析した。本研究では小山・奥村と同じ流域を対象として,単位図法に非線形性を考慮して流出解析を行い,治山事業の実施による流出特性の経年変化を検討した。小山・奥村と同様に3つの年代について単位図を作成し,それらに2001年に観測された降雨データを適用して解析を行った。その結果,流域の洪水調節機能と渇水調節機能は,治山事業完了直後にはいったん低下するが,事業完了後18年の歳月を経て,この両機能はともに上昇した。それらはいずれも小山・奥村の結果と一致する。