森林応用研究
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ヒノキ俵シボクローン「福俵」の木部組織
山口 和穂皆木 和昭阿黒 辰巳
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2000 年 9 巻 2 号 p. 53-59

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抄録
ヒノキの俵シボは幹に周期的な凸部と凹部が出現し,幹が俵を積み重ねたような形態になる現象である。人工林でもまれに出現し,材は床柱などとして珍重されている。突然変異による現象と考えられるが,出現のメカニズムについてはまだ明らかではない。関西育種場では国有林内で発見されたこのような個体をつぎ木増殖して場内に植栽しているが,8年生のクローン内のすべての個体に俵シボが再現したクローンを「福俵」と命名し,品種登録を出願中である。今回,この材料の木部組織を観察し,若干の知見を得たので報告する。主幹部分の凸部および凹部の随を含むブロックを作成し観察に用いた。木口,板目,柾目の3断面から,切片を作成し,光学顕微鏡および走査電顕で観察した。凸部では仮導管が異常膨張をおこし,通常の早材部仮導管の2倍から3倍の太さに膨れ上がっている部分が広範囲に観察された。この部分はその後再び正常な組織に戻り,異常が形成層部分で起こるのではなく,分裂後の拡大,成熟過程で発生していることを示唆している。凸部および凹部の正常部分で高頻度で観察されるトラベキュレーと呼ばれる構造もその付近で細胞壁の部分的な癒着が観察され,この構造が癒着と関係していると考えられる。以上の観察結果は俵シボの形成が細胞壁の成熟,硬化の過程における遺伝的不調に基づくことを示唆すると考える。
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© 2000 応用森林学会
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