失語症研究
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原著
実在語再帰性発話を伴ったBroca失語の経過
會澤 房子相馬 芳明藤田 信也
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1992 年 12 巻 4 号 p. 351-355

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抄録

     実在語再帰性発話を呈した1例を経験した。Alajouanineは再帰性発話の経過について4段階説 : 1. 常同的言語表出の組成分化が生じる段階,2. 不随意発話をチェックする段階,3. 浮動的発話の段階,4. 言語常同症が完全に阻止される段階,を唱えているが,本例の再帰性発話はこの4段階説に忠実にしたがって改善した。
    症例 : 52歳,女性,右利き。CT所見で左被殻に高吸収域を認め,被殻出血と診断。
    言語症状経過 : 発症当初は発声・発語は全くなく,16日目から “おさえて” だけが再帰性に発話される。発症後1ヵ月の時点で初回の検査を行い, Broca失語と診断。その後直ちに訓練を開始したが,再帰性発話は流暢,その他の語彙は非流暢という特徴的な症状を呈し, 3.5ヵ月間持続した。実在語再帰性発話の経過報告例がほとんど無い現状において,貴重な症例と考えられたので,詳細な経過と併せて失語型,流暢性について若干の考察を試みた。

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© 1992 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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