左中心前回下部梗塞後に純粋発語失行症を呈した症例を報告した。本研究の目的は,純粋発語失行症における構音の誤りとプロソディーの異常を数量化して両者の関係を検討し,基本症状を推定することにある。
本例の回復は非常に早く,発症から 18日で退院した。発話症状の検査は第2,第4,第12,および第18病日に実施した。構音の誤りにおいては歪み,置換,反復が多かった。前期2回の検査では構音の誤りとプロソディーの異常の生起率は乖離していた。また,両者が生じる位置の一致率は 0~50%と変動が大きく,両者に明らかな関連性があるとは判断できなかった。
さらに非言語的構音器官連続運動について麻痺性構音障害群と比較すると,本例は有意に速度が低下した。第18病日の本例の非言語的構音器官連続運動は,単純連続運動では問題はなかったが,複雑連続運動で錯行為が観察された。以上から本例の非言語的構音器官運動は,運動パターンが複雑になるほど構音器官の協調性が障害されることがわかった。
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