失語症研究
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特別講演
行動学からみたことばの萌芽
正高 信男
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キーワード: 言語, 乳児, 音声
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1993 年 13 巻 2 号 p. 135-146

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抄録
ヒトの母親には新生児を授乳あるいは哺乳する際に,新生児が乳首を吸うことを休止すると乳児の体あるいは哺乳ビンを軽く揺する行動傾向が見られる。彼ら母子の自然な授乳行動を観察した結果,この揺するという働きかけが,乳児の吸う行動の再開に有意な効果を及ぼしていることが判明した。揺さぶられることは乳児に随伴性として作用する。その結果母親からの揺すぶりと乳児の乳首を吸う行動は,それぞれの側から他者に向けての働きかけとして相互に “ターン” の交換の形を形成していることがわかった。最初の6週のうちに母親も乳児もおのおの一度ごとの自らの働きかけを,短縮していく傾向がある。そしてこれらの行動パターンはヒトがヒト以外の霊長類から生物学的に受けついできたものであることが,ヒト以外の霊長類の音声コミュニケーションの研究から明らかにされた。
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© 1993 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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