失語症研究
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シンポジウム
脳と言語了解
—Alzheimer 型痴呆と失語症との比較—
倉知 正佳松井 三枝藤井 勉
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1993 年 13 巻 2 号 p. 174-182

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抄録

失語症検査で, 「超皮質性感覚失語」類似のプロフィルを示した Alzheimer 型痴呆2例の言語理解障害を失語症と比較した。 (1) 聴覚的把持については, Alzheimer 型痴呆では, 2物品の復唱と口命指示は可能で, Wernicke 失語よりも良かった。しかし, 3物品では復唱できても, 指示を誤ることがあり, 超皮質性感覚失語の傾向がみられた。 (2) 比喩的表現の理解や訓読みはかなり可能で, 語義失語的特徴はほとんど示さなかった。 (3) 文意理解では, 空間的位置関係の理解が不十分なことがあり, また, 助詞を正しく把握ないし理解していないことがあった。 (4) 注意が浮動し, 転導しやすかった。 (5) 文の正誤判断では, 事物の大小や季節についての判断が不確実で, かつ当初は正答しても次第に混乱してくることがあった。以上のことから, Alzheimer 型痴呆では, 失語症的要素の他に, 注意や判断など高次の障害が加わり, 文の理解が一層不完全となるようであった。

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© 1993 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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