失語症研究
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原著
失語症者の助詞選択に関する計量国語学的検討(2)
—助詞と動詞の結びつきを中心に—
餅田 亜希子小嶋 知幸中野 洋加藤 正弘
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1995 年 15 巻 4 号 p. 329-337

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抄録

われわれは先に,失語症者の助詞選択のストラテジーについて主に名詞と助詞の結合率という観点から検討し,名詞と助詞との音韻的/意味的結合頻度,動詞からみた格助詞の意味役割,文理解の障害などが助詞選択のストラテジーに影響を与えているとの知見を得た (小嶋ら1995)。今回は同一の基礎資料をもとに,さらに助詞と動詞の結合という観点から検討した。対象 (慢性期失語症者40例),基礎資料 (正常者の話し言葉の計量言語データ),問題文および出題方法 (「名詞 (助詞) 動詞」の2文節文に5者択一で助詞を挿入する方式) は前回の報告と同一である。結果,助詞と動詞の結合率は,名詞と助詞の結合率とは異なり,2文節文における助詞選択の難易度に影響を与えていなかった。また,失語症者における助詞の運用の障害とその訓練法を考える上で,現実の発話現象をもとに算出した「助詞と他の品詞との結合率」という概念を導入することの意義について論じた。

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© 1995 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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