失語症研究
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シンポジウム
ワーキング・メモリーの神経機構
船橋 新太郎
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1997 年 17 巻 2 号 p. 126-133

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抄録

われわれは,ワーキング・メモリーを,情報の選択・収集機構,一時貯蔵機構,出力・提供機構,操作・処理機構から成る動的な情報処理システムとしてとらえ,それらの機構を反映するニューロン活動を前頭連合野で解析してきた。その結果,情報の一時貯蔵機構を反映する活動 (遅延期間活動) が前頭連合野の多数の細胞で見いだされた。また,複数の情報の保持に関連する活動も観察され,これは情報の一時貯蔵に関係する複数のニューロンの相互作用により生じることが示唆された。さらに,貯蔵されている情報の操作にはある種のフィードバック信号の関与が示唆され,この例として運動関連活動が考えられている。今後,選択・収集機構,操作・処理機構,出力・提供機構のさらに詳しい検討をすると同時に,それらの機構間のダイナミックな相互関係を検討することにより,ワーキング・メモリーに関係する神経機構を明らかにすることができると思われる。

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© 1997 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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