失語症研究
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原著
失語症例における言語音の識別能力について : 合成言語音を用いた検討
阿部 晶子遠藤 邦彦平林 順子柳 治雄大木 弘行市川 英彦
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2002 年 22 巻 4 号 p. 316-326

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抄録

本研究は,失語症例の言語音の識別能力の低下が,どうして起こっているのかを明らかにすることを目的とした。対象は,左半球損傷の失語症8例と健常者15名であった。検査刺激には,フォルマントの遷移部 (子音・母音移行部) の持続時間を一定間隔で変化させて作成した,/ba/から /wa/にいたる 10種類の合成言語音を用いた。その結果,失語症例の多くは,右耳で合成言語音を聞いた場合,遷移部の持続時間の変化を,/ba/から /wa/への変化として認識することが困難であることが示された。すなわち,失語症例では,構音方法 (破裂音か,わたり音か) の識別能力が低下していることが明らかになった。失語症例の,右耳での言語音の識別能力の低下をもたらす要因のひとつは,音の分離能力の障害である可能性が示唆された。それと同時に,音韻記憶にもとづいたカテゴリー分類能力の障害も関与している可能性が推察された。

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© 2002 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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