失語症研究
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原著
音声言語と文字言語の半球優位性が分離していると考えられる1例
内山 千鶴子内山 伸治鈴木 重忠倉知 正佳
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1987 年 7 巻 4 号 p. 260-265

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抄録
     左利きの素因のある右利きの54才の男性に失読失書が認められたが,音声言語の障害は極く軽度にしか認められなかった.CT では左の Broca 領を含む前頭葉から角回を含み後頭葉にかけての広範な出血性梗塞を示した.神経心理学的には右片麻痺,右同名性半盲,観念運動失行,構成障害,色彩失認,手指失認,失算,地誌的失見当識が認められた.
    発症1ヵ月後には,聴覚的理解と語想起に軽度障害を示したが,読み書きと模写に重篤な障害が認められた.3ヵ月後には,音声言語の障害は認められなかったが,読み書きの障害は残存していた.読みの障害は仮名に著明で運動覚性促通は認められなかった.
    本例は病変の広がりに比し音声言語の障害が軽く,音声言語の半球優位性は右か両半球に,文字言語の障害は発症8ヵ月後も残存していたので,文字言語の半球優位性は左半球にあると想定でき,音声言語と文字言語の半球優位性が分離している症例と考えられた.
著者関連情報
© 1987 一般社団法人 日本高次脳機能障害学会 (旧 日本失語症学会)
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