2008 年 56 巻 1 号 p. 73-79
母貝の施術年齢の違いが真珠養殖の生産効率に及ぼす影響を,2004年6月から2006年1月まで長崎県対馬市で飼育試験を行うことにより検討した。試験には母貝として1才貝(1才区),同系統の2才貝(2才区1),および1才区と同種苗をさらに1年間飼育した2才貝(2才区2)を用いた。各試験区にそれぞれ6.66,7.27と7.42 mmの核を施術して生残率,真珠の品質等を調査した。全区で毎年秋季に赤変病の発症とともに斃死がみられた。生残率は1才区が2才区1と2に比べて有意に高い値を示した。真珠の品質では,1才区の真珠層の巻きが厚くて,商品率や無傷真珠の産出割合が2才区1と2に比べ有意に高く,7と8 mm真珠の単価は1.3~3.4倍高かった。そのため,1才区の生産額は2才区1と2と比較して,それぞれ2.6倍と1.9倍高かった。以上より,1才貝を施術貝に用いることは,施術時に小さい核を使用するものの,母貝管理を軽減し,生残率や真珠品質を向上させ,真珠養殖の生産効率を高めると考えられた。