クロマグロ Thunnus orientalis 仔魚の攻撃行動および共食いに及ぼす飼育密度とその複合要因の影響を検討した。適切な餌が豊富で魚体サイズが揃っていれば,低密度(0.1尾/l)から高密度(0.5尾/l)まで飼育密度を増加しても攻撃頻度には影響がなかった。一方,餌不足の状態になると高密度で攻撃行動が顕著に増加した。魚体差が大きい単独要因では攻撃行動の増加はわずかで,高密度による増加傾向もみられなかった。制限給餌下で魚体差が広がると,攻撃行動は制限給餌の単独要因よりも顕著に増加し,高密度でも同様の影響が示された。共食いによる死亡は小型個体で発生し易く,高密度では顕著に増加した。特に,魚体差と餌不足が重複した場合には,攻撃行動と同様に共食いが急激に増加し,大量死することが示唆された。クロマグロ仔魚は高密度飼育下であっても餌不足や魚体差の広がりを防ぐことで攻撃行動が抑えられ,少なくとも0.5尾/l の高密度でも飼育が可能と考えられた。
河川感潮域上部は,沿岸・陸水域へ加入するニホンウナギ Anguilla japonica が初期の定着場所として利用する場であり,本種の保全上,重要な環境である。本研究では,小河川(福岡県糸島市加茂川)の感潮域において,耳石齢査定で河川加入後1年目と判定されたニホンウナギ当歳魚の生息地利用を調べた。当歳魚は水深が浅くて流れが遅い水際部に局在しており,約10 cm 径の石を隠れ家として利用した。一方,同所的に生息する1歳以上魚はより水深が深く,多様な流速の場所に分布し,当歳魚よりも大きな石の下に隠れていた。これらの結果から,感潮域上部において当歳魚は比較的限定的な特定の環境に生息すると考えられ,このような環境を対象とした保全活動の必要性が示唆された。
本研究では,胃分泌促進物質であるカツオ煮汁濃縮物(SJT-Br)を分子量別に分画し,胃分泌を促進する分子量範囲を検討した。14,000 Da 以上,6,000-14,000 Da,3,500-6,000 Da,2,000-3,500 Da,1,000-2,000 Da,100-1,000 Da の画分をクロソイ(Sebastes schlegelii )生体外培養胃へ注入し,ペプシン様プロテアーゼ(PLP)活性と分泌量を測定して人工海水(対照)および SJT-Br と比較した。その結果,14,000 Da 以上の画分はクロソイの培養胃を刺激せず,PLP の活性および分泌は SJT-Br より有意に低く,人工海水と同程度であった。一方,2,000-3,500 Da および3,500-6,000 Da のフラクションは胃分泌を急速に刺激した。このように,SJT-Br は,多くの研究で報告されている魚タンパク質加水分解物(FPH)と同様に,生理活性ペプチドを含んでいることが示唆される。今後の研究では,胃刺激作用を持つこれらの分子量画分の生理作用を in vivo で詳細に調査する必要がある。魚介類の加工によって廃棄される煮汁や FPH は,成長効率の良い養殖魚用飼料の開発に貢献しうる生理活性分子の供給源である可能性がある。
近年,兵庫県瀬戸内海海域では,魚類等による食害が原因と思われる養殖ノリの葉体の短縮化が問題視されている。本研究では,タイムラプスカメラを用いたノリ養殖施設での調査により,クロダイによる摂食がノリ葉体短縮化の原因のひとつであることを視覚的に明らかにした。クロダイが養殖ノリを摂食する様子は県下広域的に確認され,数十尾の群れを形成してノリ養殖施設に来遊し,数分~数十分の間ノリを摂食していた。また,多くの漁場で,午前よりも午後に出現頻度が高くなる傾向が見られ,ノリ生産者の作業時間帯(主に午前中)を避けて来遊している可能性が示唆された。さらに,養殖施設の沖側よりも岸側で出現頻度が高くなる傾向が見られ,食害状況と一致した。
イイダコは,瀬戸内海の重要な漁業資源で,近年,漁獲量が大幅に減少しており,増殖技術の開発が望まれている。 本研究では,産卵数や卵サイズといった繁殖生態を調べるため,2月下旬に天然下で採集された体重11.0~150.7 g の11 個体の雌を個別に2021年3月5日から7月2日まで飼育した。飼育群における産卵の期間は3月25日から5月30日であり,各個体の産卵期間は7~61日であった。 各個体は,複数回の産卵を行い,42~262 粒/個体の卵を産み,産卵数(TE)と体重(BW)の関係式は TE = 5.22 BW0.804となった。 卵の長径は 6.2~10.0 mm であり,平均値は 8.1 mm であった。一般化線形モデルから,体重と水温がそれぞれ卵サイズに正と負の影響を与えることが示され,大きな個体が低水温期により大きな卵を産むことが示唆された。
We investigated the effects of ultra-fine bubbles (UFBs) on the water quality in a closed recirculating system for larval tilapia, Oreochromis niloticus, and the UFBs’ effects on the water microbiome. The levels of inorganic nitrogen and phosphorus and chemical oxygen demand in the UFB group were maintained at lower level than those in the control group. A metagenomic analysis revealed that the ratio of Bacteroidetes increased, and that of Fusobacteria decreased in the rearing water in the UFB group compared to the control group. The study results thus indicate that the UFBs improved the water quality and changed the microbiome in the rearing water.