水産増殖
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総説
  • 樋口 健太郎
    2025 年73 巻1 号 p. 1-13
    発行日: 2025/04/30
    公開日: 2026/03/20
    ジャーナル フリー

    我が国のクロマグロ養殖は養殖種苗のほとんどを天然の幼魚に依存しており,養殖種苗の供給が不安定であるとともに天然資源への影響も危惧されている。このため,親魚より人為的に採取された受精卵に由来する幼魚(人工種苗)を用いた養殖体制への転換が求められている。しかし,天然海域と比較して,海面生簀で養成されたクロマグロ親魚の産卵期は遅いため,結果として天然種苗よりも人工種苗は体サイズが小さく,その後の生残や成長が劣ることが人工種苗の普及を阻む要因の一つとなっている。本稿では,天然海域と同じ時期に産卵を誘導し,天然種苗と同等以上に成長する人工種苗を作出する技術の開発についてその成果を概説するとともに,得られた卵の消毒や輸送,適切なふ化管理方法,さらには良質卵を高精度で予測するシステムといった採卵からふ化までの一連の卵管理方法に関する研究成果を紹介する。

原著論文
  • Md Alomgir Hosseen , 土井 航, 塩﨑 一弘, 大富 潤
    2025 年73 巻1 号 p. 15-28
    発行日: 2025/04/30
    公開日: 2026/03/20
    ジャーナル フリー

    ヒゲナガエビは,西太平洋の大陸棚から陸棚斜面にかけて広く分布している。半閉鎖的でありながら深海部分を有する鹿児島湾において1995年1月から2022年12月に採集した個体の体長組成の時系列を用いて,本種の加入,成長パターン,寿命について調べた。得られた標本の頭胸甲長は雄で8.6~29.5 mm,雌で7.7~33.6 mm であった。雌雄ともに,平均頭胸甲長11 mm 前後で4~6月に加入がみられた。年によっては12月から2月にも弱い加入がみられたが,遺伝的には同一個体群によることが判明した。成長パターンは雌雄ともに Pauly and Gaschütz の成長式で表された。成長率は12月から1月にかけて低く,本種の産卵期と一致した。雌は雄に比べて有意に最大到達体長が大きく,成長率が低かった。寿命は雌雄ともに約2年と推定された。

  • 森田 哲朗, さかなクン , 齋藤 亨一朗, 阿部 泰画, 松下 芳之, 川村 亘, 矢澤 良輔
    2025 年73 巻1 号 p. 29-41
    発行日: 2025/04/30
    公開日: 2026/03/20
    ジャーナル フリー

    イシガキフグ Chilomycterus reticulatus は,世界の岩礁やサンゴ礁域に分布し,ときに観賞魚として高額で取引される魚だが,その繁殖生理や初期生活史に関する知見は少ない。本研究では,本種の人工種苗の生産を試みた。千葉県沿岸域の定置網で採取された親魚を1,000 l 角型水槽で養成し,雌3匹から未受精卵が,雄2匹から精子がそれぞれ得られたため人工授精に供した。採取された計148,215粒の卵のうち59,099粒が受精し,33,880尾の孵化仔魚(全長3.0 mm)が得られた。これら仔魚を50日間飼育した結果,全長 16.6-19.8 mm の稚魚659尾を生残させることに成功した(生残率2.0%)。得られた稚魚のうち307尾は,孵化後105日目に全長54 mm にまで成長した。今後,得られた稚魚を成魚にまで養成することで,これまでほとんど情報の無かった本種の繁殖生理における,重要な知見が得られると期待される。

  • 藤川 稔晃, 有瀧 真人, 征矢野 清
    2025 年73 巻1 号 p. 43-50
    発行日: 2025/04/30
    公開日: 2026/03/20
    ジャーナル フリー

    海産魚の種苗生産では,形態異常の出現が大きな問題となっているが,正常魚と異常魚の境界は極めて曖昧である。本来,人工種苗の正常性とは天然魚と変わらない体型であることを評価することが重要である。しかし,実際に天然魚と比較した例は少なく,基礎的な知見は不十分である。本研究では,人工種苗のシロギスの形態変化を頭長,鰾長,肛門前部長,肛門後部長について観察するとともに,これらの部位について天然魚と比較した。その結果,シロギス仔稚魚では発育に伴って体幹部,特に尾部の相対比が小さくなることが明らかとなった。これらの変化は天然魚でも同様に認められるものの,人工種苗においてよりその傾向が強いことが示唆されたことから,今後両者におけるこの先の成長に伴う体型の変化を,鰾のサイズや脊椎骨の形状などを含め,さらに比較検討する必要がある。

  • 深田 陽久, 三浦 花步, 上田 若奈, 泉水 彩花, 高桑 史明
    2025 年73 巻1 号 p. 51-62
    発行日: 2025/04/30
    公開日: 2026/03/20
    ジャーナル フリー

    魚類養殖の持続的発展のためには,魚粉に代わりうる飼料原料が必要となっている。そこで本研究では新規原料として注目されている3種の昆虫タンパク質を用いてマダイ用飼料中の魚粉を一部代替することで,昆虫タンパク質の利用可能性を評価した。魚粉を主なタンパク質源に用いた対照飼料(FM 飼料:魚粉含量50%)と,その魚粉の50%をミバエミール,アメリカミズアブミールまたはコオロギミールで代替した飼料(FFM 飼料,BSFM 飼料,CM 飼料)を準備した。供試魚には平均体重17.7 g のマダイを用い,65日間飼育した(水温16.5℃~17.8℃)。給餌は,1日1回,試験飼料を飽食になるまで行った。試験終了時における飼育成績では,FFM 区と BSFM 区はすべての項目で FM 区と同等であり,一方で CM 区は劣っていた。以上のことから,ミバエミールとアメリカミズアブミールは,マダイ用飼料中魚粉の50%を代替可能であると思われる。

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