水産増殖
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原著論文
  • 松田 正彦, 品川 明, 日向野 純也, 平野 慶二, 藤井 明彦, 石松 惇
    2021 年 69 巻 1 号 p. 1-11
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー
    2003,2004および2008年に長崎県諫早湾の干潟漁場で,貧酸素に曝露されたアサリが嫌気的代謝によって外套腔液中に蓄積する有機酸含量(コハク酸,酢酸,プロピオン酸)の変化を調べ,アサリの生残との関係を検討した。
    2004年は水温31.3℃,DO 0.16mg/l と高水温下の貧酸素が約14時間継続し,同時に3種の有機酸含量が有意に増加して,アサリの死亡率は70%に達した。
    対照的に,2003と2008年は2004年に比べると水温が低く,貧酸素の継続時間も6~11時間と短かったため,死亡率は8%以下であった。2003年はコハク酸が,2008年は3種の有機酸が有意に増加したが,2004年よりその値は低かった。このことから,2004年の大量へい死の原因は,高水温(30℃以上)と貧酸素の複合要因であると示唆され,有機酸含量は漁場環境がアサリに与える影響を生理状態から推察するのに役立つと考えられた。
  • 佐野 菜採, 栗山 功, 古丸 明
    2021 年 69 巻 1 号 p. 13-20
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー
    2019年夏季に三重県の真珠養殖漁場において,外套膜萎縮を呈するアコヤガイが多数確認された。症状と外套膜の遺伝子発現の関連を明らかにするため,健常貝と発症貝の外套膜中心,縁膜,膜縁における貝殻基質タンパク遺伝子(msi31msi60),チロシナーゼ遺伝子(OT47pfty1)およびレクチン遺伝子(PoGal)の発現量を定量 PCR で測定,比較した。その結果,発症貝は健常貝と異なる遺伝子発現パターンを示し,特に膜縁での OT47 の発現量の減少や,縁膜での msi31 の増加が認められ,外套膜膜縁の貝殻からの剥離,貝殻内面の褐色の色素沈着,真珠層の異常等の症状との関連が推察された。また,外套膜膜縁に付着している細菌叢の 16S rRNA のメタゲノム解析を行った結果,Tenacibaculum 属の占有率が健常貝より発症後5週間以上の貝で高く,膜縁表面の細菌叢が発症により変化していることが明らかになった。
  • 寺本 匡寛, 加藤 航大, 浅香 智也
    2021 年 69 巻 1 号 p. 21-29
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー
    カワバタモロコの繁殖技術の向上を目的として,産卵実験水槽を準備し水温操作による水温刺激で産卵が誘導されるのかを検証した。水温操作は4パターン用意し,パターン1では,22℃から1日に2℃ずつ上昇させ,26℃に達したら5日間維持し,7日後から1日に2℃ずつ低下させ22℃にするのを繰り返した。パターン2では,22℃から1日に1度ずつ上昇させ,26℃達したら3日間維持し,7日後に1度ずつ低下させ22℃にするのを繰り返した。パターン3では,実験期間を通じて22℃に維持した。パターン4では,22℃から1日に2℃ずつ上昇させ,26℃に達したらそのまま維持した。水温変化の要素として平均水温,前日の平均水温差,水温日較差,水足しを説明変数とし,産卵数を対数リンク関数とした負の二項分布による一般化線形モデルにより,産卵確率を示すモデル選択を総当たり法で行った。その結果,産卵に影響を及ぼす主要因は,前日の平均水温差であることが分かった。
  • 亀井 涼平, 荒山 和則, 横田 賢史, 須能 紀之, Carlos A. Strüssmann
    2021 年 69 巻 1 号 p. 31-42
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー
    霞ケ浦の水産上重要種に対するチャネルキャットフィッシュ Ictalurus punctatus の捕食の影響を明らかにするため,摂餌活動の活発さと胃内容物を調べた。2013年8月と11月,2014年2月と5月に霞ケ浦に設定した6地点で各調査日24時間継続した釣りで標本(685個体,体長78~720 mm)を採集した。釣獲個体数は8月に平均49.0個体と多く,2月に平均14.0個体と少なく,この違いは本種の季節的な分布様式と摂餌活動の活発さを反映したものと考えられた。本種は全月,全地点において昼夜ともに釣獲され,釣獲個体数の日周変化から摂餌は終日行うものの比較的夜間に活発といえた。また,空胃率は23.2~32.0%であった。捕食量については,飽食した個体はまれであり,魚体重の1%未満の胃内容物重量である個体が89.9%を占めた。主な餌項目はテナガエビや大型魚類の断片,魚類,イサザアミ,植物や藻類であった。霞ケ浦の水産上重要種で捕食圧を強く受けているのはテナガエビであると考えられた。
  • 大西 尭行, 井土 孝志, 合田 満樹, 高岡 治, 滝井 健二, Amal Biswas
    2021 年 69 巻 1 号 p. 43-53
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー
    クロマグロ稚魚(体重1.8 g)を量産用大型水槽に収容し,絶食(F),配合飼料を 1日2回(2S),3回(3S),4回(4S),5回(5S)および5日間に4日5回 (4/5S)飽食給餌して,それぞれのエネルギー分配について求めた。摂取エネルギーに対する各エネルギー分配の割合は,糞+尿+熱量増加エネルギーは F 区を除いてほぼ40%であった。標準代謝エネルギーは 2S 区が最も高く,4/5S,3S,4S,5S 区の順に低下し,成長エネルギーは 5S,4S,3S,4/5S および 2S 区の順に減少して,それぞれ24.4,23.8,22.1,18.0および12.1%であった。また,増重量や飼料効率にも成長エネルギーに類似する区間差が得られ,クロマグロ稚魚には少なくとも1日3回,好ましくは4~5回の飽食給餌が推奨された。また,飽食4日後に1日絶食する場合には,成長エネルギーの著しい低下が認められた。
  • 佐々木 正
    2021 年 69 巻 1 号 p. 55-69
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー
    カルシトランスの屋外における大量培養の安定性を明らかにするため,春季から秋季に100 l,500 l および 5 kl 水槽を用いてネオグラシーレと比較する試験区を設定して屋外培養試験を実施した。また,カルシトランスの市販品を元種に用いる方法の実用性や高温期に遮光幕を用いることの有効性を明らかにするための培養試験も併せて実施した。その結果,カルシトランスは培養適期の春季には最高細胞密度で100 l,500 l 水槽とも約600万細胞/ml に達し,最高細胞密度はやや劣る傾向があるもののネオグラシーレと同様に安定的な培養が可能であることが判明し,さらに市販品を元種に用いることでより効率的な培養ができることを確認した。また,高温期に遮光幕を用いて培養水温の上昇を抑制する方法は,餌料用微細藻類の安定培養に効果的であり,高温耐性の低いカルシトランスでも盛夏期における培養が可能であることが示唆された。
  • Wastu Ayu Diamahesa , 深田 陽久, 益本 俊郎
    2021 年 69 巻 1 号 p. 71-77
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー
    アナゴに対する飼料水分含量の影響を,市販乾燥飼料とそれを粉砕・加水したモイスト飼料の2種類を用い,5水槽ずつ個別に飼育して成長試験と摂餌試験で調べた。成長試験では各飼料を飽食で6週間給餌飼育した。引き続き行った摂餌試験では,成長試験時に与えた飼料の逆の飼料を与え,摂餌率と飼料への最短接近時間を測定した。成長試験の結果,両試験区間の増重率(%),瞬間成長率および日間給餌率に有意差が無く,飼料水分量に関わらず飼料栄養素を等しく利用できると考えられた。摂餌試験では,試験開始当初は,乾燥飼料切替区がモイスト飼料切替区に比べて接近時間が長く摂餌量が低い傾向にあったが,飼育11日目以降は接近時間が短縮して摂餌率も上昇した。以上の事から,乾燥飼料への馴致に10日程度必要だが,飼料の水分含量は栄養利用性や摂餌性に影響はなく,アナゴの飼育において乾燥飼料が利用できることがわかった。
  • 岩井 翔, Wastu Ayu Diamahesa , 深田 陽久, 益本 俊郎
    2021 年 69 巻 1 号 p. 79-86
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー
    ミールワーム飼料への大豆リン脂質の添加効果をコイ幼魚で調べるため,魚粉を20%含む対照飼料(CONT),魚粉をミールワームミール(MWM)で置き換え大豆リン脂質を添加(SBLD)または無添加(MWMD)した飼料の計3飼料をコイ幼魚に4週間与えた後の,成長成績と体組成を調べるとともに血漿トリグリセリド(TG)濃度を給餌後8時間に測定した。MWMD 区の増重率および飼料効率は CONT に比べて有意に劣っていたが(p < 0.05),SBLD 区は MWMD 区より有意に優れ(p < 0.05),CONT 区と同等となった。脂質蓄積率および血漿 TG 濃度も成長成績と同様 MWMD 区が有意に劣ったのに対し,SBLD 区は CONT 区と大差なかった。以上のことから MWM の添加でコイの成長は劣るが,SBL の添加で成長は改善し結果として無魚粉でコイを成長できることがわかった。
  • 藤岡 康弘, 根本 守仁, 亀甲 武志
    2021 年 69 巻 1 号 p. 87-91
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー
    ホンモロコの主要な産卵場である琵琶湖の内湖に棲息する淡水魚6種の各8個体を用いて,孵化直後のホンモロコ仔魚を昼間と日没直後の夜間の1時間に捕食する個体数を調査した。24時間の絶食状態に置いた捕食者全てがホンモロコ仔魚を昼夜ともに捕食した。平均捕食数はコイとホンモロコを除く4種で夜間に減少し,ビワヒガイとブルーギルではその有意性が認められたことから視覚捕食者と考えられた。また,ホンモロコ親魚による同種仔魚の活発な捕食が昼夜ともに認められた。これらの結果は,ホンモロコの産卵期に内湖に棲息する多くの魚類がホンモロコ仔魚を昼夜ともに捕食し生残率に大きな影響を与えている可能性を示している。
  • 今井 正, 出濱 和弥, 坂見 知子, 高志 利宣, 森田 哲男, 今井 智, 岡 雅一, 山本 義久
    2021 年 69 巻 1 号 p. 93-100
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は長期間,硝化作用を有する熟成状態のろ材を保存するための安定状態を評価することである。密封して保湿状態にしたろ材のアンモニア酸化活性に及ぼす保存温度の影響を調査した。ろ材のアンモニア酸化活性を25℃で測定した後,これらを海水から取り出してジッパー付き袋に入れて,1~35℃の8段階の温度で180日間管理した。1℃で保存したろ材のアンモニア酸化活性は最初と同様であった。加えて,アンモニア酸化古細菌とアンモニア酸化細菌の現存量は,それぞれ14%と10%でわずかな減少であった。5~20℃で保存したろ材の活性は約50%まで減少した。活性のさらなる減少は25℃以上で保存したろ材で認められた。また,1℃で約3年間保存した場合でも,ろ材の活性が33%残っていることが示された。ゆえに,硝化作用を有する熟成ろ材の長期間保存のためのアンモニア酸化微生物の保持は,設定温度温度内では1℃で最も高かった。
  • 鷲尾 洋平, 大濱 光希, 岸本 謙太, 木下 政人, 家戸 敬太郎
    2021 年 69 巻 1 号 p. 101-112
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー
    ゲノム編集生物は,ヒトの食用の植物や動物の育種に利用できる可能性がある。骨格筋成長の抑制的調整因子として作用するミオスタチン(mstn)は,魚類養殖の生産性向上の為の主要な標的遺伝子である。これまでに,稚魚期における8週間の飽和給餌試験により,mstn を欠損したマダイ(変異体)は野生型と比較して,増重率・specific growth rate・飼料効率が高い事を報告している。本研究では,変異体の養殖への利用可能性を検討するため,出荷サイズに近い若齢期に12週間の飽和給餌試験を行い,成長成績と加工収量(可食部)に関して野生型と変異体とを比較した。その結果,変異体は野生型と比較して給餌量は0.08%減少していたが,成長は同等であり,飼料効率は9%向上した。さらに変異体では同体長の野生型と比較して可食部が7〜8%増加した。よって,mstn 欠損マダイは将来の養殖に有用な品種であると考えられた。
短報
資料
  • 山本 昌幸, 伊藤 篤, 山崎 英樹, 兼松 正衛, 冨山 毅
    2021 年 69 巻 1 号 p. 123-129
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/03/20
    ジャーナル フリー
    リシケタイラギ稚貝の成長および生残・成長と環境因子との関係をみるために,香川県屋島湾において人工種苗を用いた垂下中間育成試験を行い,7月から11月にかけての月間生残率と成長率を毎月調べた。月ごとの平均水温は18.9~27.5°C,平均クロロフィルa濃度は2.9~11.8 µg/l,塩分21 psu 未満の日数(低塩分日)は0~3日であった。垂下飼育開始時に殻長約 5 mm であった稚貝は3カ月で43~58 mm に成長し,7月に着底した稚貝の成長は8月に着底したものより速かった。月間生残率と増重量はそれぞれ16.7~100%/month と0.03~1.50 g/month であった。一般化線形モデルから,生残率は塩分が12 psu 以下の日が増えると低下し,増重量は水温が高く,殻長が大きいほど高くなることが示された。
エラータ
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