水産増殖
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原著論文
  • 谷口 亮人, 川岸 朋樹, 田中 歩美, 高田 慎也, 萩本 啓仁, 白樫 柊児, 永田 恵里奈, 江口 充
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 71 巻 2 号 p. 75-85
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    安定したワムシ生産は,健康な魚を生産するために重要である。本研究では,生分解性樹脂 poly(butylene succinate-co-adipate)(PBSA)の添加がワムシ生産に与える影響,とくに,ワムシ,ユープロテス,そしてビブリオ属細菌に対する効果を調べた。PBSA(0.5-50 mg/ml)はワムシの成長を促進していた。その効果は量依存的であり,PBSA が多いほど効果が高かった。最大の比増殖率および日間増殖率はそれぞれ0.519および68%であり,至適培養条件と同等かそれ以上であった。一方,ユープロテスの増殖に対して,PBSA(1 mg/ml 以上)は量依存的な抑制効果を示した。ビブリオ属細菌に対する PBSA の直接的な抑制作用は不明であるが,PBSA でよく成長したワムシの培養水からはビブリオ属細菌の検出数が少なかった。PBSA はワムシ培養水の pH を減少させ,ワムシ培養水の pH を低く保つ緩衝作用を示していた。本研究は,ワムシ培養に PBSA を利用することで,ワムシの成長を促進しつつ,ユープロテスやビブリオ属細菌の混入を防ぐことができることを示した。

  • 高木 基裕, 河田 直樹, 山田 裕貴, 河口 洋一
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 71 巻 2 号 p. 87-98
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    徳島県那賀川には3つの貯水ダムが連続して設置され(下流より川口ダム,長安口ダム,小見野々ダム),複数の種苗が放流されている。本研究では,集団解析に有効なマイクロサテライト DNA 多型により,那賀川のダム湖群に生息しているアユの由来を解明し,適切な資源管理に資することを目的とした。判別の結果,一部を除き放流されている人工種苗の多くは海産由来であったが,それぞれの種苗間の多くでは遺伝的異質性が確認された。那賀川のダム湖群で採捕されたアユ仔魚と幼魚は海産由来であり,ダム下流の那賀川の天然種苗とは異質性が確認されなかった。一方,2018年10月末に小見野々ダム上流で採捕された仔魚については,特定の人工種苗と似た集団構造が確認された。

  • 逵原 幸奈, 松田 浩一, 糟谷 享
    2023 年 71 巻 2 号 p. 99-109
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    マハタ仔魚飼育時における油膜除去開始時期の違いが鰾の一次開腔率および成長に及ぼす影響について調べた。生産現場で実施されている10日齢から油膜除去を行う試験区に加え,6,8日齢から開始する2試験区を設定して飼育試験を行ったところ,6日齢から油膜除去を行った試験区で開腔率が有意に高かった。各試験区とも最初に鰾の開腔個体が確認されたのは10日齢で,これまでの報告と比べて 4-5 日早かった。これらの要因として,これまでの報告より仔魚の成長が速かったことが考えられた。したがって,飼育状況によってはこれまでの報告よりも早くから鰾の一次開腔が起こり得ること,そして発育状況に応じて油膜除去の開始時期を調整する必要があることが明らかになった。鰾の開腔個体と未開腔個体の全長は,20日齢までは有意差は見られなかったが,25日齢以降は開腔個体の方が大きく,一次開腔の有無がその後の成長にも影響を及ぼすことが明らかになった。

  • 片山 知史, 周 月秋, 川津 浩二, 小林 豊, 林 俊裕
    原稿種別: 原著論文
    2023 年 71 巻 2 号 p. 111-114
    発行日: 2023/06/20
    公開日: 2024/06/20
    ジャーナル フリー

    東京湾の富津市沖において,タイラギは2000年代から徐々に漁獲量が増加している。しかし,本種の資源生態学的知見がほとんど無く,今後必要となるであろう資源管理のための知見が整っていない。本研究は,富津沖で漁獲されたタイラギを用いて,成熟および産卵状況を中心とした生殖年周期を明らかにすることを目的とした。生殖巣の組織学的観察の結果,産卵期が7~9月であると推察された。内臓重量指数および貝柱重量指数は,漁場で低酸素水塊が頻発する4月から6月にかけて最大となった。これらの結果は,春季の低酸素状態が,富津沖のタイラギ再生産のみならず,漁獲物の価値を低下させることを示唆するものである。

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