2010 年 58 巻 3 号 p. 337-343
ニゴロブナにおける雌性発生卵の第二極体放出阻止のための低温刺激処理(CST)および高温刺激処理(HST)後の染色体の行動を観察した。受精7日後の正常仔魚生存率は CST および HST をそれぞれ媒精後7分および9分に開始した場合に最大値を示した。雌性発生は1腹卵を使って紫外線照射精子(3,000 erg/mm2)で誘導した。CST の後,第二減数分裂の紡錘体が消失し,カリオメアと半数性核,あるいは二倍性核が,雌性前核と極体の代わりに観察された。これらの構造体は処理後15分(媒精後62分)に精子星状体の中心へ移動して接合核を形成し,媒精後72分に第1卵割が起こった。一方 HST 後では,卵割は処理後12分に起こった。核の変化は CST 後よりも HST 後の方が早かったが,両処理後の核の行動は類似していた。カリオメアおよび前核の行動の違いは処理の違いではなく,卵の熟度と感受性の違いによっていると考えられた。