2013 年 61 巻 1 号 p. 073-080
アントクメの太平洋沿岸における分布の北限域にあたる伊豆大島波浮港の水深11 m の地点において,2005年2月から2007年12月にかけて約3年間に渡り,毎月1回の枠取り調査を実施し,その生長と成熟を調査した。アントクメの生活年周期は1月から4月の発芽期,4月から6月の伸長生長期,6月から8月の肥厚充実期,8月から11月の成熟,枯死・流失期の4期に分けられた。伊豆大島におけるアントクメの生物量は,約3年間に渡る調査期間中,年により大きく変動した。その変動の要因として発芽期の萌出密度が影響しており,胞子体の萌出密度には,前年の配偶体の生長時期の水温が影響している可能性が示唆された。また,アントクメの子嚢斑形成開始時期は,それ以前3ヶ月間の水温平年差と関係が認められ,水温が平年より低いと子嚢斑形成が遅れる傾向が認められた。