2013 年 61 巻 3 号 p. 293-302
ケガニ Erimacrus isenbeckii の種苗生産における幼生の生残率の向上を目的に,1 l ビーカーを用いて本種幼生を第 1 齢ゾエアからメガロパまで飼育して,栄養強化したアルテミアおよび珪藻 Thalassiosira sp. の飼育水への添加が幼生の生残率に及ぼす影響を検討した。併せて種苗生産から得た幼生および使用した生物餌料(アルテミア,珪藻)の脂肪酸分析を行った。その結果,飼育実験における幼生の生残率は飼育水に珪藻を添加することで有意に高くなったが,アルテミア中の n-3HUFA 量は幼生の生残率に影響を及ぼさなかった。しかし,n-3HUFA 量が少ないアルテミアを与えた場合にメガロパへの脱皮時に高い死亡率を示した。また,ケガニ幼生中の n-3HUFA 量はゾエア幼生期からメガロパ幼生の期間に大きく変動しなかった。これらの結果から,幼生中の n-3HUFA 量は n-3HUFA を含有する生物餌料を摂餌することで維持され,珪藻の飼育水への添加は種苗生産におけるケガニ幼生の生残および発育を改善すると考えられる。