2014 年 62 巻 2 号 p. 207-209
高知県四万十川水系の津賀ダム湖および吉野川水系の早明浦ダム湖に生息するブラックバス個体群についてミトコンドリア DNA 分析による種の判定とマイクロサテライト DNA 多型解析に基づく遺伝的多様度の推定を行った。ミトコンドリア DNA 調節領域のシーケンスの結果,両ダム湖の個体群はいずれもハプロタイプ(c)のオオクチバスで構成されていることが明らかとなった。また,マイクロサテライト DNA7 ローカスを用いた解析の結果,両ダム湖の個体群の平均アリル数および平均ヘテロ接合体率の期待値に基づく遺伝的多様度は同じ程度であったが,標本集団間の FST は有意に高く(P<0.01),遺伝的差異が認められたことから,両ダム湖の個体群は異なる導入起源を持つ可能性がある。本研究の結果は,高知県内のダム湖へのブラックバスの新たな移入と他の地域への移出を監視する上で有効であると考えられる。