水産増殖
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原著論文
カタクチイワシ Engraulis japonicus における卵母細胞の最終成熟に伴う形態学的,生化学的変化
Dipak PandeyYong-Woon Ryu後藤 理恵松原 孝博
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2017 年 65 巻 1 号 p. 29-40

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抄録

カタクチイワシは,本邦の重要な漁業資源であると同時に沿岸生態系を構成する主要な種である。本種は多回産卵し,一尾の雌は産卵期間中,周期的にラグビーボール型の浮遊性卵を生む。本研究では,14L-10D の光周期,水温19.5℃~20.9℃の飼育環境下における最終成熟期の卵母細胞の変化を形態学的,生化学的に調べた。同条件では,最終成熟には8時間を要し,その過程は stage-I,卵黄蓄積終了期; stage- II,最終成熟初期; stage-III,最終成熟中期; stage-IV, 最終成熟後期; stage-V, 排卵期の5期に分類された。その間に,卵重量は69 μg から244 μg へ,卵長径は728 μm から1,386 μm へと増加し,水分含量は75% から94%に変化した。ゲルクロマトグラフィーとSDS-PAGEによる分析から,最終成熟後半に顕著な卵黄タンパク質の分解が見られ,前者での主卵黄タンパク質ピークは 430 kDa から 170 kDa に変化した。併せて遊離アミノ酸含量が卵母細胞1個当たり 2 nmol から22 nmol へと11倍に増加した。これらの結果から,最終成熟期に卵黄タンパク質を分解することで遊離アミノ酸を生産し,内部の浸透圧を上昇させて吸水を導くことが示唆された。

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© 2017 日本水産増殖学会
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