2017 年 65 巻 4 号 p. 331-338
藻類の生長や生残は海洋環境の物理的,化学的変化の影響を強く受ける。本研究では気候変動に起因する集中豪雨に伴い出現する海水の一時的な塩分低下,および濁度上昇の影響について,初期発育段階のヒジキSargassum fusiforme幼胚を用いて実験室規模の実験で検討した。マイクロプレートを用いた幼胚の培養実験の結果,ヒジキ幼胚の生残率は塩分変化の影響を受け低下した。また海水塩分が半分(17 psu)に低下すると6時間後に塩分が回復しても,その後の生長は日間成長率1.1%にまで低下し,生残に与える影響よりも顕著であった。濁度の影響に関しては,濁度が上昇するにつれて生残,生長ともに低下した。しかしながら軽微な濁度の100 NTUの海水に2時間暴露された場合には,それ以上の濁度では1%以下にまで日間成長率は低下したものの,濁りがない場合(0 NTU)と同様の2%以上の高い成長率を維持した。