抄録
キュウリウオ Osmerus dentex の個体群動態の解明と水産資源の有効利用のために,本種の適切な年齢評価方法と成長軌跡を検討した。標本は2018年10月から2019年9月に噴火湾でオッタートロール網着底曳で採集し,2019年4月下旬から5月中旬には山崎川河口で産卵魚を対象としてたも網で採集した。3人の読み手による扁平石耳石の読みとり値の変動係数の平均値と平均百分率誤差(それぞれ12.4%,9.3%)は,鱗の読み値(15.1%,11.4%)に比べて低い(良い)結果だった。耳石の3人の読み手の一致率(41.2%)は,鱗(17.7%)よりも高かった。耳石には3月から8月にかけて不透明な縁辺がみられ,産卵期の4月と5月にピークを迎え,年に一度の輪紋形成が示唆された。最大年齢は6.8歳,最大体長は標準体長で269 mm であった。本調査海域で捕獲されたキュウリウオは,成長性能指数φ’によって他の海域に比べて速い成長を示し,この成長の差は緯度が影響している可能性がある。