2021 年 69 巻 3 号 p. 213-222
九州南西岸沖で採集した標本を用いて,チダイ雄の成熟サイズと生殖周期を調べた。組織学的観察により,計788個体の精巣を調べた。精巣の成熟段階は,最も進んだ精細胞の発達段階,間質の量,精小嚢内腔と輸精小管内の精子の有無,被膜の厚さにより,未熟,発達中,成熟前期,成熟後期,放精後,休止期の6つに分類した。発達中,成熟前期,成熟後期,放精後の精巣を有する雄を成熟個体と定義し,50%成熟サイズに基づいて本種雄の成熟サイズを尾叉長169 mm と推定した。生殖腺指数の経月変化と成熟前期あるいは成熟後期の精巣を有する個体の出現状況から,放精期は10月から5月と推定した。一方,本種雄の肥満度は10月から6月にかけて高い傾向が見られた。