2022 年 70 巻 1 号 p. 75-84
ミヤコタナゴの二枚貝鰓葉腔への産卵機構を明らかにすることを目的に,カワシンジュガイ及び人工産卵基質に対するアプローチ方向の決定要因の検討と人工産卵基質内での産卵管からの卵の放出方向を観察した。カワシンジュガイと人工産卵基質の設置角度を変え,出水管からの出水方向と本種の繁殖行動を観察した。その結果,本種は底砂面と出水角度の挟み角が,90°以下の方向からアプローチした。次に,内部を可視化させた人工産卵基質を用いて,産卵の瞬間を観察した。touching 時の産卵管は,先端が頭部方向に湾曲し,卵を魚体の前方向に放出していた。以上の結果より,殻頂側より繁殖行動を始めることで,雌の産卵管が出水管より挿入され,卵は鰓葉腔に産卵されやすくなる。雄は入水管付近に放精することが明らかとなった。