水産増殖
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河川におけるナガエバCaranx sexfasciatus QUOY et GAIMARD (アジ科) の生息について
伊藤 猛夫
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1963 年 11 巻 4 号 p. 229-242

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抄録

1962年8・9月に四万十川水系広見川で漁獲された海産魚ナガエバの生息状態と生活環境について同年9月中旬に調査した。
1.広見川のナガエバの生息上限は河口から約65km上流で, 生息水域は中間渓流型であり, 灌漑排水などにより上流ほど汚れている, その下流河口までは魚類の溯上の障害となるものがほとんどない。
2.広見川の魚類の優位種はアユまたはフナで, その他オイカワ, カワムツ, コイ, ナマズ, ヨシノボリが多く, この水域は, いわゆるフナ型河川に属する。
3.広見川ではナガエバは7~9月の間広見川に生息し, 8・9月におもにアユ狩剌網で少なくとも200尾が漁獲され, 9月下旬以降は下流に降ったものと考えられる。
4.9月に採捕または観察されたナガエバの体長は10~20cmで, これらはこの年の春~初夏にふ化した幼魚とみられる。
5.ナガエバはふつう群をなして生息して, おもに朝・夕に淵と平瀬の浅所で摂餌し, 昼間は淵または平瀬の深所に, 夜間は淵にいるようである。
6.ナガエバの行動は非常に敏捷で, アユ, オイカワなどを追い, オイカワなどの游泳稚魚やヨシノボリなどの底生小魚を食べている。
7.広見川のナガエバはアユの放流種苗に混入した卵に由来するものではなくて河口から溯上して来たものと考えられる。'62年に四万十川水系, 仁淀川水系にナガエバが溯上したこととそれらの河川環境との関連, 生息の制限要因としての水温, などについて考察した
8.広見川にナガエバとともに溯上したシマイサギについて述べ, またナガエバの養殖の可能性について推考した。

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