水産増殖
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ミジンコの利用に関する二, 三の実験
杉目 宗尚里見 至弘松島 昌大
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1969 年 17 巻 1 号 p. 19-25

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抄録

ミジンコが大量培養された場合のミジンの利用方法および利用価値を検討するため, 淡水魚 (コイ, コクレン) および観賞用海産魚を供試魚として, 餌としてのミジンコの与え方およびミジンコの餌料効率, さらに供試魚の増肉係数および魚の嗜好性などを検討した。得られた若干の知見は次に示す通りである。
1. ヤマトゴイ1年魚に乾燥ミジンゴを与えた場合供試魚をミジンコ給餌区 (ミジンコ50: 小麦粉50) とサナギ給餌区 (サナギ50: 小麦粉50) とにわけ, それぞれに1日当り魚体重の10%を与えて飼育した。
1-1) 成長支配の因子としての水温, pH, アルカリ度などの値に差のない時の飼育結果では, 増重倍率がミジンコ区で3.61サナギ区で1.73を示した。
1-2) 増肉係数はミジンコ区が7.67でサナギ区の約1/2を示し, サナギ区にはセコケ病がみられた。
1-3) これらのことから, ミジンコをコイに摂餌しやすい状態にすれば, サナギよりも餌としての価値は高い。
2. ミジンコに対する観賞用海産魚の嗜好性
いき餌 (イトメ, ミジンコ), なま餌 (イソメ, アジ), 加工餌 (タラコ) を119魚種に投餌し, 摂餌状態の良否を比較観察した。
2-1) 餌状態の良い順にあげれば, アジ→(ミジンコ, イソメ)→タラコ→イトメとなった。
2-2) 摂餌状態が良好な区分よリミジンコをみると, 他の海産の餌以上に良く捕食されることがわかった。
3. コクレンの摂餌量と成長
台湾産のふ化後52日目のコクレン幼魚を使用し, ミジンコ (いき餌) を毎日飽食量与え, 成長および日間増重量, 日間摂餌率などを検討した。
3-1) 水量53lの水槽飼育では, 体重0.47g (ふ化後52日) のものが体重19.16g (ふ化後142日) となった。
3-2) ふ化後150日のコクレンに対し, 魚体重の30%, 100%, 300%相当のミジンコを与えた場合, 日間増重率はそれぞれ9%, 13.5%, 11.5%であった。
3-3) 増肉係数は, 魚体重と同量のミジンコを与えた場合は6.1を示し, 他の餌料生物を与えた場合に類似した結果が得られた。
3-4) 魚体重と同量のミジンコを与えた場合の日間摂餌率は24時間-95%, 25時間-100%を示した。

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