水産増殖
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津市沿岸におけるマテガイの生殖周期
河原 辰夫加藤 信治郎
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1971 年 19 巻 1 号 p. 31-42

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抄録

1) 津市沿岸の干潟に生息するマテガイを, 1969年4月より1970年4月に至る期間に採集し, その生殖巣の組織切片を作成して生殖周期を明らかにした。
2) 二枚貝類が一般的に経過すると思われる生殖巣の発達過程中に十数段階を設け, それを区分して休止期, 活動期, 成熟期, 放出期, 消耗期の5期とし, あるいはそのうちの活動期を回復期, 発育期, 充満期の3亜期に細分して合計7期とし, 両者を適宜に用いて生殖周期を表示した。
3) 津市沿岸のマテガイでは, 生殖巣の活動は1月中旬頃に開始されるものと思われ, 回復期は1, 2月, 発育期は2, 3月, 充満期は3, 4月, 成熟期は4, 5月, 放出期は6, 7月, 消耗期は6月下旬より11月頃までに及び, さらに休止期が12月ないし1月上旬頃に存在するものと推測された。したがって本種の産卵は年1回で, その盛期は5月下旬ないし6月上旬頃と考えられる。
4) 二枚貝類の生殖周期は5基本型に分類することができるが, マテガイは消耗期にいわゆる濾胞期の形をとることなく, 生殖巣は萎縮退化していき, しかも回復期の前に休止期をもつ型 (小胞退化有休型) に属するものと見なされる。
5) 既に研究された二枚貝類の生殖周期を本報告の規準により整理し, それと比較した結果, マテガイは小胞退化型であるゆえ, 小胞残存型に属しているものの多い既報告の種類とは対照的な特徴を備えていると考えられた。
6) マテガイは小胞残存型でないゆえ, 小胞に貯えられた卵精子が放出期の終りまでに十分に放卵放精されることなく, 多量の残存卵精子を生ずる。
7) マテガイの産卵誘発は極めて困難であるが, このことは小胞残存型でない本種の特性と関連があると思われる。

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