水産増殖
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循環瀘過式飼育槽による稚アワビ育成について
坂井 英世
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1971 年 19 巻 3 号 p. 115-120

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抄録

アワビ資源の培増は, 漁民の手で行なうことが望ましいという観点に立って, ここに初歩的な実践活動として, アワビ稚貝の飼育を漁民の庭先で, 延98日間の委託養成を行なった。
1. 循環瀘過飼育槽を用いて高水温期の稚貝の飼育を行なったが, この期間中に海水の入れかえは3回, このうち延40日間を海水の入れかえなしで飼育した。
2. 飼育水中には水質安定のために, 瀘材にカキ殻を用い, また貝のカルシウム代謝促進のために塩化カルシウムを海水1トン当り500gを溶入した。
3. 延98日間の飼育で1年貝は, Aグループ (カキ殻付着器) 平均殻長6.1mm, Bグループ (黒色セルロイド板付着器) 平均殻長3.5mmの成長量を示し, 付着器別ではカキ殻に良好な結果を得た。
4. 飼育歩留は98日間で1年貝93%および, 98%, 2年貝88%であった。
5. 飼育水は常に循環系をとるために, 水分蒸発が現われ, このため塩素量増加が1日当り0.05-0.08‰を示した。
6. 飼育水の化学的酸素消費量は, 貝の排泄物, 海藻等の分解物の影響も加わって, 1日当り0.1-0.3ppmの増加量を示し, 最高値7.8ppmを呈した。
7. 水素イオン濃度はカキ殻瀘材により, 7.4-7.5の間に安定した。

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