水産増殖
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マシジミの生態に関する研究
第2報 生殖法について
池末 弥志垣 誠一
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1976 年 24 巻 2 号 p. 68-74

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抄録

マシジミの生租法, 特に排卵と保育幼生の放出状況および幼生生と卵生生に関して飼育実験を行ない, 次の点を明らかにした。
1) 約6ヵ月の飼育期間中70%の個体が大量の体外排卵を行ない, さらにその20%が2回の排卵を行なった。飼育水温などの環境変化が排卵の刺激となるようであり, 個体の成熟盛期は少なくとも年2回あるが, 環境条件によっては周年生殖を行なうようである。
2) 体外に排出された卵はすべて自家受精しており沈性卵, すみやかに卵発生が進み, 水温23-25℃では40-45時間でD型幼生になり, 浮遊期は全くみられず底生生活を行なう。
3) 体外排卵と同時にその10-20%程度に相当する卵が母体に保育され, 3-5日までにD型幼生として放出される。その後は引続き少量ずつの排卵が起り, 体内に保育, 幼生になって放出される過程が約1ヵ月間も続く個体が多い。マシジミはこれまで幼生生の生殖を行なうとされていたが, 同時に卵生型の生殖法も行なっていることを確認した。
4) 体外排卵数は1回1-5万, 放出幼生数は2-6千個程度で, 前者は後者の7-8倍にも達する。しかし, 何れが再生産に大きく貢献しているかは今後の研究にまたねばならない。

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© 日本水産増殖学会
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