水産増殖
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油脂酵母ワムシによるイシダイの種苗量産
福所 邦彦岩本 浩松岡 正信今田 克藤田 矢郎
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1978 年 26 巻 2 号 p. 71-81

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抄録

1977年6月-8月に長崎水試増養殖研究所において, 油脂酵母による栄養強化ワムシを併用したイシダイ仔稚魚の飼育 (実験I), 油脂酵母によるワムシの量産 (実験II), 油脂酵母ワムシによるイシダイの種苗生産 (実験III) を行い, 次の結果を得た。
1) 実験Iでは, 屋外100t円型槽で平均全長24mm (日令39) までの飼育を行い, 計約6万尾の稚魚を生産した。この間にワムシと5) に示す他餌料を順次併用給餌した。
2) ワムシの給餌量はクロレラによる栄養強化ワムシ11億 (日令1-同8), 油脂酵母による同ワムシ190億 (5-25), 油脂酵母ワムシ118億 (18-29) 計319億個体であった。
3) 屋外40t槽を用いた油脂酵母によるワムシの量産では, 1日1槽当りのワムシ生産量は平均5億個体で, 油脂酵母1g給餌当りの生産量は平均10.2万個体 (約0.306g) であった (実験II)。
4) 実験IIIでは, 屋外200t槽で平均全長26mm (日令36) までの省力化を図った飼育を行い, 約22万尾の稚魚を生産した。
5) この間に与えた餌料は油脂酵母ワムシ (日令2-同32), マダイ仔稚魚用配合飼料 (15-35), コペポーダ類 (18-32), 魚介肉ミンチ (24-35) で, 各餌料の総給餌量はそれぞれ268億個体, 11.6kg, 19.3kg, 187.0kgであった。
6) 生産した種苗は従来の方法の場合に比べて活力に優り, 取揚げおよびその後の輸送 (活魚船で約5時間) で斃死する個体がなかった。
7) 油脂酵母は, ワムシの量産とイシダイ仔稚魚への餌料価値の両面でクロレラの代替えとなり, 両者に共通して含まれる脂質の中の少なくともエイコサペンタエン酸 (20:5ω3) がマダイ仔魚と同じくイシダイ仔魚にも必須脂肪酸であることが推察された。

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