水産増殖
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ヒラメの種苗生産に関する研究-I
室内水槽における自然産卵について
平本 義春小林 啓二
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1979 年 26 巻 4 号 p. 152-158

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抄録

ヒラメを用いて種苗生産の基礎である親魚養成の可否を検討し, さらに種苗生産技術の方式を確立することを目的として, 1975年11月18日から地元 (鳥取県中部-東部海域) で漁獲されたヒラメを室内水槽 (φ3.70×1.00m, 飼育水量8トン) で飼育した。この結果, 1977年3月16日-6月29日の問に水槽内での自然産卵がみられ, 産卵期間, 産卵時刻, 産卵数及びふ化率等について若干の知見を得た。
1) 一本釣及び小型底引網で漁獲されたヒラメを, マアジ, イワシ類, ニギス, ハタハタ等を餌料として, 漁獲後20日前後で餌付けすることができた。
2) 親魚の摂餌は, 水温が10℃以下ではほとんどみられず, 10-25℃の範囲では水温が高くなる程活発になり, 25-27℃ではその量は急激に低下して, 27℃以上になると摂餌行動はほとんどみられなかった。
3) 水槽内の自然産卵に供した親魚は雌4尾 (全長60.5-71.5cm), 雄8尾 (全長50.0-72.5cm) の計12尾であった。
4) 産卵期間は3月16日 (水温14.5℃)-6月29日 (水温21.4℃) の106日間であり, この間に78日産卵がみられた。雌親魚1尾当りの平均産卵回数は19.5回で, ヒラメは多回産卵魚であることが明らかになった。
5) 産卵時刻については, 0-6時の間に2/3の産卵がみられ, 産卵時刻と日の出及び日の入時刻との間には規則性のある関係はみられなかった。
6) 雌親魚4尾による総産卵数は16,171,700粒であり, 雌1尾当り平均4,042,925粒の産卵がみられた。産卵数の日変化からみると, ヒラメの産卵盛期は3月下旬-4月下旬の40日問であり, この期間に13,246,800粒の産卵がみられ, これは総産卵数の81.91%を占めた。またこの4尾による1日の最多産卵数は714,600粒であった。
7) ふ化率は1日の産卵数が多い時に高い傾向を示し, 産卵期の前半が79.8%と高く, 後半は35.0%と低かった。産卵期間を通算したふ化率は75.9%であった。
8) 1日当り得られたふ化仔魚数は, 4月7日の678,010尾が最も多く, 20万尾以上のふ化仔魚が得られた日は, 3月26日-5月1日までの37日間のうちの24日であり, 水槽内の自然産卵による採卵適期は3月下旬-4月下旬と考えられた。

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