水産増殖
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稚アワビの殼質腐食を抑止する方法について
坂井 英世
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1980 年 28 巻 2 号 p. 102-106

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抄録

1) 稚アワビを循環濾過式飼育槽で長期間育成すると, 殻皮に著しい腐食をもたらすので, この腐食を抑止する方法を検討するために, 濾過材の一部にカキ殻砕片を添加し, その効果を把握する実験を行った。
2) カキ殻砕片の添加の有無による稚アワビの成長は差をみなかった。
3) カキ殻砕片の添加の有無による飼育海水中の可溶性有機物量は, 飼育中にそれぞれ増加したが, 添加による溶存量の差をみなかった。
4) カキ殻砕片の添加による飼育海水の水素イオン濃度は, 8.1~8.4の範囲に, 無添加の場合では8.0~8.3の範囲にあって, 無添加の飼育槽にやや酸性化の傾向にあった。
5) カキ殻砕片を添加して飼育した稚アワビの殻皮は, 実験終了まで鮮かな緑色を呈し, 殻皮の腐食抑止に効果的な結果をみた。無添加で飼育したものには, 殻の頂部から中央まで殻皮を腐食させ, 欠陥的状態を呈した。

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