水産増殖
Online ISSN : 2185-0194
Print ISSN : 0371-4217
ISSN-L : 0371-4217
ヒラメの種苗生産に関する研究-II
―ふ化仔魚の10kl水槽による飼育について―
平本 義春小林 啓二三木 教立
著者情報
ジャーナル フリー

1980 年 28 巻 3 号 p. 134-141

詳細
抄録

ヒラメの放流用種苗を量産する目的で, 昭和53, 54年度にふ化仔魚の10kl水槽による飼育試験を行った。更にこの試験結果を基に稚魚 (平均全長14.0mm) 10万尾を生産するために必要な二, 三の生物餌料の日間給餌数・量とその総給餌数・量等を検討し, 次の結果を得た。
1) ホルモン剤投与および自然産卵によって得た卵からのふ化仔魚を, 12~17千尾/klの密度で上屋付き10klコンクリート水槽 (200×490×130cm, 飼育水量10kl) 5面に収容し, 33~35日間飼育した。
2) 飼育水は卵がふ化した後ヒーターを投入し, 水温が18℃以下にならないよう加温した。換水は飼育5日目から隔日ごとに行い, 飼育中・後半は毎日行った。換水量は2~5kl/日の範囲であった。
3) 餌料は, イースト・ワムシ, 油脂酵母ワムシ, グリーン・ワムシをふ化後2日目から給餌し, 仔魚の消化管が回転した10日目からアルテミア幼生を併用した。
4) ふ化直後の仔魚の全長は2.45~2.95mmであり, 10日目で4.2~6.0mm, 20日目で7.4~10.2mm, 24~27日目に変態を完了する個体 (9.40~12.75mm) が出現し, 33~35日目で12.0~16.0mm (平均13.92mm) となった。仔稚魚の成長は, 水温が高い程, またアルテミア幼生を早い時期から多量に給餌する程良好であった。
5) 稚魚の取り上げは, 直径33mmのビニール管を用いて飼育密度および稚魚の大きさ等より落差を調整しながら行うと, へい死尾数が少なく, 作業能率も優れていた。
6) 10kl水槽による飼育 (33~35日) の歩留りは, 24.30~50.57% (平均歩留り36.31%) の範囲であり, 10kl水槽1面で平均48, 000尾の変態を完了した稚魚 (平均全長13.92mm) を得た。
仔稚魚の飼育中に発生した個体の異常は, 腹水症および飼育20日前後にみられた尾鰭の分化が正常でない個体, 更に変態を完了した稚魚に数10%の色素異常個体が認められた。
7) 稚魚10万尾 (全長14mm) を生産するために必要なシオミズツボワムシの日間給餌量は0.34~2.16億個体 (平均1.26億個体) , アルテミア幼生のそれは21~4, 583万個体 (平均2, 146万個体) であった。また両者を合計した日間給餌量は91~1, 078g (平均562g) であった。更にシオミズツボワムシの総給餌量は43.03億個体, アルテミア幼生のそれは5.59億個体であり, また両者を合計した総給餌量は19.06kgであった。
8) 稚魚10万尾を生産するために必要なアルテミアは, 本試験の回収率 (44.10%) , 1/4ガロン缶で7.30缶を要した。

著者関連情報
© 日本水産増殖学会
前の記事 次の記事
feedback
Top