水産増殖
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キチヌの種苗生産に関する基礎的研究―II
卵発生と仔魚の形態変化
赤崎 正人時任 明男
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1982 年 29 巻 4 号 p. 218-228

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抄録

1975年9月25日から12月4日まで, 宮崎大学農学部付属水産実験所において, タイ科魚類のキチヌにシナホリンを投与して人工受精を行い, 卵発生を観察するとともに, ふ化仔魚の形態変化について調べた。
1.キチヌ卵の平均卵径は0.787±0.022mm (10粒) であり, 油球径は平均0.20±0.005mmであった。
2.受精卵は1時間23分で2細胞, 2時間10分で16細胞となり, 4時間35分後には桑実期に達し, 12時間33分後には胚体の形成が始まる。23時間35分後には心臓搏動が確認され, 筋節数25となる。25時間40分後には胚体は卵黄をほぼ2/3周する。29時間後には胚体は卵黄をほぼ1周し, ふ化が始まる。
3.キチヌ卵は水温26℃で21時間30分, 16℃で43時間5分, 常温21.5~23.2℃ (平均22.6℃) で29時間でふ化した。水温 (X) とふ化所要時間 (Y) の間にはY=79.072-2.223Xの関係がみられる。
4.キチヌのふ化仔魚は全長1.8~1.95mm, 平均1.89mmである。卵黄径は0.84mmで, 油球は大部分の個体で卵黄の中央よりやや後下方に位置する。肛門は卵黄の直後にあり, 体のほぼ中央に位置する。
5.ふ化後2日目の仔魚は全長2.75~3.0mmで, 卵黄はほとんど吸収される。肛門は体の前部1/3に移動し, 第5筋節目に開く。3日目には全長2.9~3.1mmに達し, 開口するとともに腸は2回転する。
6.ふ化後32日目の仔魚は全長10.0mmとなり, ほぼ鰭条数も定数に達し, 稚魚期に移行したものと考えられる。

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