抄録
トラフグの配合飼料開発のための基礎的知見を得る目的で, デキストリン, 脂質, ビタミン量の異なる5種類の配合飼料を80日間投与し, イカナゴ投与区と成長および生理状態を比較した。
各配合飼料区は, イカナゴを投与した区に比べ, わずかに低い成長を示した。組織学的観察では, 体側筋や消化管に異常はみられなかったが, 肝細胞の脂肪の蓄積はイカナゴ区に比べて少なく, PAS陽性の物質が多く認められた。
デキストリンの添加量の減少に伴って, 血液や尿性状に差を生じ, 比肝重量や肝細胞の直径も小さくなった。デキストリンを完全にセルロースで置き換えた場合には, 腎臓の尿細管上皮細胞に軽度の混濁腫張や空胞変性が認められた。飼料中の魚粉とデキストリンの割合は5対3が適当と考えられた。
フィードオイルを10%添加した区では, 5%添加区と比較して, 肝重量が大きく, 今回使用した配合飼料の中ではイカナゴ投与区に最も近い成長および生理状態を示した。
ビタミンを倍量加えた場合においても, 生理状態の改善は認められなかった。