水産増殖
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フランスガキ成熟母貝の育成と被面子幼生の放出に必要な積算温度
押野 明夫関 哲夫
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1992 年 40 巻 3 号 p. 347-353

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抄録

1) 1986年から1988年にわたり, かき研究所海上筏と室内でフランスガキ母貝を飼育し, 卵胎生のフランスガキが被面子幼生を放出するまでに要する積算温度を明らかにする実験を行った。
2) フランスガキの幼生放出は自然水温群では, 1987年7月7日と1988年7月3日に最初にみられた。また, 室内加温群では, 1987年5, 月21日と1988年5月16日にみられた。
3) 被面子幼生が放出されるまでの平均水温とその期間 (飼育日数) の逆数との相関係数を, 9月1日以降10日間隔で起点をずらして求め, 相関の高い起点日を明らかにした。
4) 高い相関の得られた起点日の中で飼育期間を最短とする起点日は11月1日であり, その場合の飼育日数の逆数と温度との関係は次式で表すことができる。
1/d=0.006699+0.001039T, (r=0.9980)
d; 被面子幼生を放出するまでの日数
T; 平均水温
r; 相関係数
5) フランスガキの幼生放出までに要する積算温度の計算起点日は, 11月1日とするのが適切であり, 成熟に関する生物学的零度は6.5℃, 被面子幼生を放出するまでに要する積算温度Σ (t-6.5) は, 972℃・日であると推定された。

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