1993 年 41 巻 1 号 p. 7-11
自然の生態系における物質循環の原理を適用した飼育水系 (生態系飼育法) を構築し, 飼育水系内での餌料の再生産とそれに伴う飼育水質保全の効果を調べた。飼育実験は2回行い, 実験1では生産者としてナンノクロロプシス, 消費者としてシオミズツボワムシを用いた。実験2では生産者としてテトラセルミス, 消費者としてシオミズツボワムシを用いた。生産者の培養は, ワムシの飼育廃水と沈降性物質の分解抽出液を培地として行った。ナンノクロロプシスおよびテトラセルミスの再生産量は双方とも, それを含む総給餌量の30%を占め, 入力餌料物質の節約がはかられた。そのため, 入力給餌量を基準として算定した餌料転換効率は, 総給餌量を基準とした餌料転換効率のおよそ1.5倍を示した。また, 生態系飼育実験区のワムシ飼育水質の保全状態は, 在来法飼育区と比べ, きわめて良好であった。