1年目リシリコンブ胞子体の生長に及ぼす窒素, リン施肥の影響

抄録

1990年6月から1992年12月にかけて, 礼文島, 利尻島において, 環境調査および無機態窒素, リン酸を主成分とする溶出調節型肥料を用い1年目リシリコンブ胞子体を対象に施肥試験を行ったところ, 以下の点が明らかになった。
1) 当海域の窒素およびリン酸濃度が5月～11月に枯渇することから, この時期の海藻生産力が制限されていることが示唆された。
2) 本試験では, 水質面からみた施肥の有効範囲は, 施肥地点から半径約50mの範囲内に限られていた。また肥料設置後, 窒素で約30日, リン酸で約20日の範囲で, 水質への影響があった。
3) リシリコンブ葉体は, 施肥により大型化する場合が多く, 当海域でのコンブの生長が窒素およびリンの不足により制限されていることが示唆された。
4) 葉体の実入りへの影響は明確ではなかったが, 施肥区の葉体の水分含量が高くなる傾向があった。
5) 葉体の成熟が促進された。
6) 葉の再生率は低下した。