抄録
オニオコゼの飼育仔稚魚について, 遊泳と摂餌にかかわる形質の形態発育を記載し, 発育段階の設定を行った。まず, 遊泳機能に関する形質の発達に基づくと, オニオコゼ仔稚魚は以下の5段階に分けられた。1) 遊泳未発達期 (ふ化~体長3.6mm [D-0~D-1] ) : 遊泳機能に関する形質としては, 膜鰭からなる鰭だけが出現した; 2) 胸鰭遊泳期 (体長3.6~4.7mm [D-1~D-8] ) : 胸鰭の支持骨と胸鰭鰭条が出現し発達する時期; 3) 移行期 (あるいは尾鰭準備期, 体長4.7~5.6mm [D-8~D-12] ) : 脊索の末端部が上屈し, 尾鰭の支持骨と鰭条が出現, 発達する時期; 4) 尾鰭推進期 (体長5.6~7.0mm [D-12~D-18] ) : 脊椎骨が出現, 発達し, さらに背鰭と臀鰭の支持骨と鰭条が出現, 発達する時期; 5) 完成期 (体長7.0-7.5mm以上 [D-18-20以降] ) : 稚魚としての遊泳能力を獲得すると考えられる。さらに, オニオコゼ仔稚魚は, 摂餌機能に関する形質の発達に・基づいて, 以下の5段階に分けられた。1) 摂餌未発達期 (ふ化~体長3.6mmまで [D-0~D-1] ) : 仔魚は未開口で, 栄養は完全に内部栄養に依存する時期; 2) 吸い込み期 (体長3.6~5.1mm [D-1~D-8] ) : 口腔を形成する基礎的な構成要素が出現し, 口腔内の陰圧を利用して摂餌する時期; 3) 移行期 (あるいは吸い込み発達期, 体長5.1~約6mm [D-8~D-15] ) : 口腔構成要素の化骨や鰓蓋骨の出現で口腟内の陰圧がより強くなり, また前上顎骨と角骨の出現で口の開閉がより機能的になる時期; 4) 噛みつき期 (体長約6~8mm [D-15~D-21] ) : 口裂に占める前上顎骨の割合いが一定になり, さらに顎歯と咽頭歯, 前鋤骨歯が出現することで, より機能的な顎の開閉と噛みつきによる餌の捕獲が可能となる時期; 5) 完成期 (体長約8mm以上 [D-21以降] ) : 稚魚としての摂餌能力を獲得すると考えられる。以上のように, 遊泳・摂餌機能の発達からみると, オニオコゼの仔魚から稚魚への変化は, 体長7.5~8.0mm以上 (D-20-21以降) であると判断された。なお, 各鰭の鰭条の定数という観点からみたオニオコゼの仔魚から稚魚への変化は, 体長6.2mm (D-17) であった。