1998 年 46 巻 4 号 p. 547-555
循環濾過飼育におけるティラピアの成長と水質変動との関係を調べた。循環濾過において, サンゴ砂を用いなければ, pHが急速に6を下回り, 亜硝酸化成細菌の働きの低下に伴い, アンモニア態窒素が漸増し, その状態が持続されることにより, 硝酸化成細菌の活動も鈍り, 亜硝酸態窒素も蓄積すること, 水質の悪化に伴い, 飼育水の着色が目立つことが明らかになった。一方, サンゴ砂を用いることは, pHの低下を防止でき, 硝化細菌全般の活動の活発化に極めて有効に作用することが判明した。なお, 水質悪化に伴い助長される着色成分 (黄色色素) は, 8時間程度の活性炭による処理により速やかに吸着・除去できた。
濾材を比較検討した結果, バイオアルファ, シポラックス, ゼオライトとも, 魚体に影響を及ぼすほどの大きな差は認められなかった。
また, 本実験においてアンモニア態窒素の増加による, ティラピアの増重率や日間成長率の低下は認められなかった。なお, 成長と総窒素濃度との間に相関がみられたが, 今後更なる検討が必要である。今回の結果から, ティラピアを循環濾過式水槽で飼育する場合には, アンモニア態窒素濃度81mg/l, または硝酸態窒素濃度616mg/lまでに達する飼育水中 (初期値はそれぞれ0) で70日間ほぼ正常に飼育できることが明らかとなった。