水産増殖
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人工魚礁域に蝟集するキジハタの食性
萱野 泰久
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2001 年 49 巻 1 号 p. 15-21

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抄録

1996年8月から'99年12月の間に,備讃瀬戸西部の人工魚礁域に蝟集するキジハタを刺網で採捕し,全長および体重を測定後,胃内容物の査定,計測を行った。得られた195個体の試料は月別に整理し,個体数法,重量法,出現頻度法,およびIRI法により解析した。キジハタ採捕魚の4~12月の問の月別群摂餌率は62.1~89.5%と高かったが,魚体重当たり月別平均摂餌率は0.3~1.7%と低かった。本種は人為的に給餌されるペレットのほか,長尾類(モエビ科,アキアミ),異尾類(カニダマシ科),短尾類(クモガニ科,ワタリガニ科,オウギガニ科),および魚類(ハゼ科,カタクチイワシ)を主に摂食した。胃内容物組成には明瞭な季節変化は認められなかったが,魚体サイズと胃内容物組成との関係では,全長25cm以上の個体で魚類の出現頻度が高まった。%IRIは長尾類(45.0%),異尾類(28.3%),短尾類(14.8%),魚類(10.8%)の順に高く,これらが本種の餌生物として重要と考えられた。これらの餌生物は人工魚礁に付着あるいは蝟集する動物群と類似し,人工魚礁が餌生物の供給源として機能していることが示唆された。

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