抄録
河川に遡上したアユ稚魚の体長と水温の関係を1994~2003年に富山湾に流入する庄川と神通川および神通川河口付近の海域で調べた。河川で採集されたアユ稚魚の体長分布の下限と河川水温並びに海域で採集されたアユ稚魚の体長分布の上限と海水温との間には, 有意な負の直線関係が認められた。アユの遡上開始は川と海の水温が約10℃に達した頃で, 海の水温が17℃を越えると海域では稚魚は認められなくなった。庄川の遡上期間は3月31日~6月15日で, 積算日数は27日~69日の範囲にあると算出された。初期遡上群の体サイズが最も大きい理由は, 河川水温に耐えられるような大型に成長した個体から遡上が可能になるためと推定された。富山湾に流入する河川において, 海産系の人工種苗の放流に際しては, 河川水温が10℃に達した時に体長9cm以上の大型個体から放流を開始し, 河川水温が14℃以上に上昇すれば体長6cm程度の小型魚でも放流が可能であると考えられた。