2018 年 29 巻 p. 51-61
本稿は、公文書とアカウンタビリティについて、三つの論点を取り上げ、時間軸から考察した。第一に、公文書の作成・保存・公開というサイクルにおいて、特に作成段階での議論が十分でなく、作成者、つまり官僚の目線で議論しなければ、今後、合法的に公文書が多く残されないのではないかとの懸念を示した。第二に、外交文書には将来へのアカウンタビリティだけでなく、国家の構成員以外へのパブリック・ディプロマシーとしての要素があると指摘した。だからこそ、外交史料館には公文書館とは異なる機能があると言える。第三に、昨今東アジアでも採用されている移行期正義では公文書が事実認定上の重要な根拠とされるが、そこではかつての私文書が公文書とされるなど、文書の公私が時間軸で変化する可能性があることを示した。