本稿の目的は,2021年7月―2022年6月の1年間を中心とした近年,本邦において発表・報告されたパーソナリティに関わる個人差変数を扱った研究の動向を概観し,本邦の個人差研究が抱える課題と展望について論じることである。パーソナリティ心理学における個人差研究を概観するにあたり,本稿ではパーソナリティを構成する個人差変数を,通状況的に安定した基礎的特性と,状況・文脈に依存した目標,信念,態度を含んだ特徴的適応の2つに大別した。そして各々のレベルに含まれる個人差変数を扱った研究について概観し,その成果をまとめた。最後に,本邦で行われた一連の個人差研究が,パーソナリティの統合的・包括的な理解に資するために,課題として考えられることを述べた。具体的には,本邦の個人差研究はパーソナリティの種間差を扱う研究や一人ひとりの特異性を扱う研究が不足している点,交互作用への着目が不足している点,特に特徴的適応のレベルを扱う研究において基礎的特性を考慮しないことが多い点などが指摘でき,これらを踏まえて今後の展望を論じた。