教育心理学年報
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巻頭言
I わが国の教育心理学の研究動向と展望
  • ―「非認知(社会情緒的)能力」の視座から―
    溝川 藍
    2025 年64 巻 p. 1-16
    発行日: 2025/03/30
    公開日: 2025/09/27
    ジャーナル フリー

     本稿では,日本教育心理学会第66回総会の「発達」部門におけるポスター発表と,2023年7月から2024年6月までの1年間に『教育心理学研究』,『発達心理学研究』,『心理学研究』,Japanese Psychological Researchの4誌に掲載された論文のうち,乳幼児期と児童期を対象とした発達研究の概観を行った。はじめに,対象となる研究全体について,研究領域と研究方法の傾向の量的な整理と分析を行った。次に,このうち雑誌掲載論文を取り上げて,近年,世界的に注目が集まっている「非認知(社会情緒的)能力」の視座から,「自己に関わる心の力」,「社会性に関わる心の力」,「自己と社会性の発達を支える環境」という3つの分類による内容面の整理と検討を行った。最後にこれらの結果をふまえて,今後の研究の課題と展望を提示した。

  • ―社会的課題と発達研究の接点―
    岡田 有司
    原稿種別: I わが国の教育心理学の研究動向と展望
    2025 年64 巻 p. 17-36
    発行日: 2025/03/30
    公開日: 2025/09/27
    ジャーナル フリー

     本論では,日本教育心理学会第66回総会(2024)の発表論文集および,2023年7月―2024年6月に発刊された国内の学術雑誌に掲載された発達に関する研究をレビューし,国内の発達研究の動向と展望を示すことを目的とした。研究は大きく青年期までを対象とした研究と,成人期以降を対象とした研究に区分され,社会的課題の観点からレビューがなされた。それにより,青年期・成人期以降の研究ともに,その発達段階における主要な発達的課題を扱いながらも,研究には現代の社会的課題が反映されていることが示唆された。例えば,青年期の研究では,学校生活における適応や,インターネットに関わる問題が取り上げられていた。成人期以降では,親や子育てに関する課題や,特定の職業・経験にフォーカスした研究がなされていた。これらの動向を踏まえ,今後の発達研究に必要な視点について議論がなされた。

  • ―社会的文脈に規定される動機づけ,学習に注目して―
    大谷 和大
    原稿種別: I わが国の教育心理学の研究動向と展望
    2025 年64 巻 p. 37-47
    発行日: 2025/03/30
    公開日: 2025/09/27
    ジャーナル フリー

     本稿では,教授・学習・認知領域の動向として,動機づけ研究を中心に学習について社会的文脈に着目したレビューを行った。本稿では,まず2024年度の日本教育心理学会の動向として,日本教育心理学会第66回総会でのポスター発表の概要についてまとめた。次に,社会的文脈に着目した国内の論文の内容について,過去3年分のレビューを行った。特に,「協同学習・友人との学習」,「学級(学校)環境」,「学校を取り巻く環境」,「家庭環境」の観点から論じた。全体的には,学級(学校)環境に注目した研究が最も多く発表されていた。一方で,部活動,心理的安全性(e.g., 教師と保護者の関係),多職種連携(地域社会と学校の関わり)など学級や学校を取り巻く環境に着目し,独自のテーマに取り組む論文がいくつか発表されていた。当該領域の研究に不足している点についても触れながら,今後の展望について議論した。

  • 古村 健太郎
    原稿種別: I わが国の教育心理学の研究動向と展望
    2025 年64 巻 p. 48-65
    発行日: 2025/03/30
    公開日: 2025/09/27
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,近年の教育社会心理学に関する研究の動向を検討することであった。まず,教育社会心理学の範疇について議論し,学校で行われる教育や介入だけではなく,学校外で行われる教育や介入,コミュニティへの介入にも注目する必要性を指摘した。次に,日本教育心理学会第66回(2024年)総会における研究発表と,2023年7月―2024年6月に刊行された『教育心理学研究』(第71巻3号―第72巻2号)を中心に,教育社会心理学研究の動向を検討した。最後に,学校外で行われる教育や介入,コミュニティへの介入についての動向を検討するとともに,課題と今後の展望について議論した。

  • ―特性の変化に関する研究の動向―
    千島 雄太
    原稿種別: I わが国の教育心理学の研究動向と展望
    2025 年64 巻 p. 66-82
    発行日: 2025/03/30
    公開日: 2025/09/27
    ジャーナル フリー

     本稿では,パーソナリティ特性の変化に着目して近年の研究動向を概観する。まず,国内の研究動向を知るために,2021年7月から2024年6月の3年間に刊行された研究を中心として,本邦における研究を整理した。具体的には,パーソナリティの変化の程度と個人差,変化の要因(遺伝,ライフイベント,対人関係,介入・教育プログラム)について,得られた研究結果を示した。その上で,国外の研究で提唱されている,統合的要因モデルや,変化の4つのメカニズム(前提条件,トリガー,強化因子,統合因子)を説明するモデルを紹介する。さらに,近年注目を集めている自発的なパーソナリティの変化を取り上げ,現在までに得られた知見を解説する。今後の展望として,最新の研究動向に沿った研究を行う必要性,より広範なパーソナリティについて検証すること,変化の個人差に焦点を当てること,変化の意義を探求することについて議論する。

  • 原田 新
    原稿種別: I わが国の教育心理学の研究動向と展望
    2025 年64 巻 p. 83-97
    発行日: 2025/03/30
    公開日: 2025/09/27
    ジャーナル フリー

     本稿では,2023年7月から2024年6月末までの1年間における国内の臨床心理学に関する研究の動向を概観した。「臨床心理学的問題」,「臨床心理学的援助」の2つの観点に大別した上で,それぞれをさらに細かくテーマごとに分類した。特に学校関係および,小・中・高・大学生の何らかの問題について取り扱う研究が多数みられたが,その中で,要配慮者本人ではなく,その周囲の他者に関して検討する研究が複数みられた。障害者支援の文脈で,合理的配慮の提供が重視されている昨今において,何らかの問題を抱えた当事者にとっての「社会的障壁の除去」に役立つよう,当事者本人ではなく,周囲の環境にアプローチするような研究も,今後さらに取り組まれることが望まれる。

  • ―子どもたちと教師の支援に向けて―
    米田 英嗣
    原稿種別: I わが国の教育心理学の研究動向と展望
    2025 年64 巻 p. 98-111
    発行日: 2025/03/30
    公開日: 2025/09/27
    ジャーナル フリー

     本稿では,コミュニケーション支援のための研究,学級における個別支援,教育方法について展望した。2023年7月から2024年6月までの1年間を中心に発表された研究を紹介した。コミュニケーション支援のための研究として,意図の理解,心情の推測,視点の取得について展望を行った。学級における個別支援として,「児童・生徒支援」と「教員支援」のように分類し,支援を受ける側と支援を与える側それぞれの観点から行われた研究を展望した。教育方法に関しては,児童・生徒および当事者の視点,教員および保護者の視点から行われた研究を展望した。最後に,今後の課題として,多領域連携の必要性とニューロダイバーシティの可能性について検討した。

  • ―近年の『教育心理学年報』における議論を踏まえて―
    永井 智
    原稿種別: I わが国の教育心理学の研究動向と展望
    2025 年64 巻 p. 112-134
    発行日: 2025/03/30
    公開日: 2025/09/27
    ジャーナル フリー

     本稿では2023年7月から2024年6月末までの1年間に,わが国で発表された学校心理学に関する研究の動向を概観した。その上で,2015年以降学校心理学部門で指摘されてきた学校心理学の研究動向における課題と,現在の研究動向との対応状況について考察した。日本教育心理学会総会における発表96件と,公刊論文36件を概観した。その結果,公刊論文においては(a)実践研究やシングルケースデザインの研究などは実施されるようになっていること,(b)一方で,サンプルサイズ設計や縦断調査デザインを用いた調査は少ないこと,(c)間主観性,環境やシステムなど,当該領域で主流となっている研究デザインを適用しただけでは実現困難な視点に基づく研究の報告は依然として見られないことなどを報告した。今後の課題として,研究・実践の更なる展開だけでなく,そこで得られた知見を共有し,次の研究・実践へと効果的に活用していく基盤を構築していくことの重要性を指摘した。

  • ―測定のデジタル化・オンライン化と統計分析手法の相互発展―
    寺尾 尚大
    原稿種別: I わが国の教育心理学の研究動向と展望
    2025 年64 巻 p. 135-160
    発行日: 2025/03/30
    公開日: 2025/09/27
    ジャーナル フリー

     本稿は,教育心理学研究,教育測定・評価研究におけるデータ収集のデジタル化・オンライン化の将来像や進展の仕方について共通点と相違点を整理した上で,それぞれが焦点を当ててこなかった視点の発掘を試みることを目的とする。『教育心理学研究』第71巻3号から第72巻2号と,『日本教育心理学会第66回総会発表論文集』における測定・評価・研究法部門を含めた教育測定・評価研究の両方に焦点を当て,大学入学者選抜・学力調査・Computer-Based Testing・統計理論の開発と実践の4つの観点から,データ収集のデジタル化・オンライン化と統計分析手法に関する最新動向と課題を明らかにした。これからの時代には,データ収集のデジタル化・オンライン化に即応して測定理論のアップデートも求められることから,両者が相互に発展していくことの必要性について論じた。

II 展望
  • ―学習者の身体に注目して―
    粟津 俊二
    原稿種別: II 展望
    2025 年64 巻 p. 161-178
    発行日: 2025/03/30
    公開日: 2025/09/27
    ジャーナル フリー

     教育デジタルトランスフォーメーションは,教育のデジタル化を通して,学習者主体の,個別最適化された学びへと変革していくことである。国内他学会と比べると,日本教育心理学会ではあまり研究発表がされてこなかった。本稿では教育デジタルトランスフォーメーションの定義を説明し,学習者の身体に着目した3つのトピックを選んで,国内外の研究状況を整理した。まず遠隔授業に関する研究を,学習者,教授者,物理的環境,社会的環境に分けて整理した。次にデジタルツールとして,デジタルテキスト,個人別端末とクラウドサービスに関する研究を紹介した。第3に仮想現実について,VR教材とアバターに関する研究を紹介した。最後に,これらのデジタル技術が,個別最適化された学びにどのように繫がるのか,考察した。教育のデジタル化は,学習者と環境との相互作用を変化させる。教育デジタルトランスフォーメーションには,学習者の身体がいる環境や,その環境における相互作用のあり方を考える必要がある。

  • 五十嵐 哲也
    原稿種別: II 展望
    2025 年64 巻 p. 179-197
    発行日: 2025/03/30
    公開日: 2025/09/27
    ジャーナル フリー

     近年,日本の学校教育においては,不登校の急増が大きな課題となっている。文部科学省(2024)によれば,令和5年度間に不登校であった小中学生および高校生は,過去最多の状況である。そこで,本稿では,不登校の背景や支援方法に関する近年の研究動向を理解することにより,不登校という課題が示す子どもの心のありようや,不登校という課題に支援者が向き合うべき姿勢を検討することとした。まず,不登校の背景としては,子ども自身の情緒的課題や生活習慣,発達特性の存在が検討されていた。また,学校内の対人関係や学校環境,家庭内の保護者やきょうだいといった観点からも検討されていた。一方,不登校に対する支援としては,校内支援体制,教師,スクールカウンセラー,校内教育支援センター,体験活動,校外機関,オンライン,予防的支援の観点から検討されていた。以上を踏まえて,不登校研究の成果に基づいて不登校支援を行い,その不登校支援の成果に基づいて新たな不登校研究を実施していくというような,研究と支援の循環化による現状の改善について討論を行った。

III 教育心理学と実践活動
  • ―初等教育段階への導入に注目して―
    栗山 直子
    原稿種別: III 教育心理学と実践活動
    2025 年64 巻 p. 198-214
    発行日: 2025/03/30
    公開日: 2025/09/27
    ジャーナル フリー

     本稿では,第一に2020年から小学校で必修化されたプログラミング教育に関して必修化の経緯を解説する。小学校におけるプログラミング教育の目的であるプログラミング的思考について説明する。さらにどのような教材を用いて小学生にプログラミング教育を行うのかについて紹介する。第二に,日本教育心理学会やその周辺学会で行われているプログラミング教育に関する実践研究を紹介する。例えば,思考の育成に関わる研究,児童の動機づけ,教員の不安など様々な研究がある。これらの研究の成果と課題について検討を行う。最後に,まとめとして,今後,教育心理学からどのような貢献ができるのかについて検討を行う。

IV 日本教育心理学会 公開シンポジウム
V ハラスメント防止委員会企画講演
VI 日本教育心理学会第66回総会
VII 第59回(2023年度)城戸奨励賞
VIII 第22回(2023年度)優秀論文賞
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