教育心理学年報
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巻頭言
I わが国の教育心理学の研究動向と展望
  • ―子どもの社会性の発達と養育者のかかわり―
    東山 薫
    原稿種別: I わが国の教育心理学の研究動向と展望
    2020 年 59 巻 p. 1-8
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル フリー

     本稿では,まず『日本教育心理学会第61回総会発表論文集』で乳幼児および児童を対象としているポスター発表におけるテーマの傾向について概観した。次にポスター発表で多く取り上げられていたテーマである子どもの社会性および養育者のかかわりに関する論文を概観した。具体的には,主軸である『教育心理学研究』は2016年7月から2019年6月までの3年間に掲載された論文を対象とし,その関連領域である『心理学研究』,『発達心理学研究』,その他国際学術誌に掲載された論文は2018年7月から2019年6月までの1年間に掲載された論文の中から,乳児期,児童期を対象とした研究を概観した。

  • 加藤 弘通
    原稿種別: I わが国の教育心理学の研究動向と展望
    2020 年 59 巻 p. 9-27
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,2018年7月―2019年6月までの1年間に国内で刊行された国内学会誌4誌と2019年9月に開催された日本教育心理学会第61回総会で発表された青年期から成人期,老年期までの発表を概観し,その現状と課題を明らかにすることである。対象となった研究は日本教育心理学会第61回総会でのポスターによる研究発表と学会誌に掲載された論文であり,それぞれを分けて動向を概観した。分析の対象となった研究は,中学校段階,高校段階,大学段階,成人期以降,多世代にわたるものに分類された。またそれぞれの段階でテーマ別に分類し,研究内容を要約して記載した。

     動向分析の結果,まず青年期研究における中学生・高校生を対象とした研究と大学生を対象とした研究の量的なバランスの偏りの問題を指摘し,学会レベルで必要となる対応について問題提起を行った。さらにサンプリングやサンプルサイズの問題を指摘し,研究知見の一般化の問題について議論した。

  • 小山 義徳
    原稿種別: I わが国の教育心理学の研究動向と展望
    2020 年 59 巻 p. 28-42
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル フリー

     本稿は,この数年の間に発表された,日本教育心理学会における教授・学習・認知領域における研究を概観し,この分野における成果を紹介した。本稿の対象としたのは2018年7月から2019年6月末までに『教育心理学研究』に掲載された論文及び,2019年9月に日本大学で開催された日本教育心理学会第61回総会で発表された内容である。本稿では,『教育心理学研究』に掲載された研究と,総会で発表された研究を分けて紹介し,学会誌におけるトレンドと学会発表のトレンドが明らかになるように構成した。また,「探究的な学習」に関する理論やエビデンスとしてどのような研究があるかを検討した。その結果,「探究的な学習」に関する研究があまり多く行われていないことが明らかになった。そのため,最終節では,特に「疑問生成」にフォーカスして,教育心理学の「探究的な学習」への展開可能性について述べた。

  • 太幡 直也
    原稿種別: I わが国の教育心理学の研究動向と展望
    2020 年 59 巻 p. 43-56
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,教育社会心理学に関する研究の近年の動向を概観することと,教育社会心理学が社会的貢献を果たしていくための視座を示すことであった。前半では,日本教育心理学会第61回総会における教育社会心理学に関する研究,2018年7月から2019年6月までの1年間に刊行された『教育心理学研究』に掲載された教育社会心理学に関する論文を取り上げ,概観した。後半では,2016年7月から2019年6月までの3年間に『教育心理学研究』に実践研究として掲載された論文の特徴を整理した。そして,今後の課題を,多面的な分析や測定による検証,知見の積み重ね,出版バイアスへの対処の点から論じた。

  • ―パーソナリティ特性,アイデンティティを中心とした変化・発達研究の展開に向けて―
    畑野 快
    原稿種別: I わが国の教育心理学の研究動向と展望
    2020 年 59 巻 p. 57-73
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,パーソナリティ特性,アイデンティティ・プロセスに関する縦断研究を中心に概観し,パーソナリティ研究の発展可能性について論じることである。そのために,まず,McAdams & Zapata-Gietl (2014) に基づき,自己,アイデンティティ,パーソナリティ特性の概念的弁別性を確認した。次に,パーソナリティ特性の変化に関する研究を概観し,パーソナリティ特性が社会投資の原則や自己概念の明瞭性,意志によって変化すること,さらに,適応感と関わることを確認した。加えて,アイデンティティ・プロセスと健康及び日本の独自性を検討した研究を概観し,精神的健康と縦断的に関連すること,欧米とは異なる日本独自のアイデンティティ・プロセスの特徴が見出されていることを確認した。そして,アイデンティティ・プロセスの相互関連・発達に関する研究を概観し,パーソナリティ特性とアイデンティティは相互に関連すること,その関連は発達段階によって異なることを確認し,それらを踏まえ,青年期のパーソナリティ特性の変化を説明する原則として個人投資の原則を提唱した。最後に,パーソナリティ研究の発展に向けての4つの方向性を述べた。

  • 田中 志帆
    原稿種別: I わが国の教育心理学の研究動向と展望
    2020 年 59 巻 p. 74-91
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル フリー

     本稿では,2018年6月から2019年6月まで(一部2017年を含む)に発刊された,臨床心理学領域の論文を概観した。まず,初の国家資格者である「公認心理師」が誕生した年であるため,臨床心理学の各学派と職域で,心の健康についての共通認識を持つことが重要な課題であることを論じた。次に日本教育心理学会第61回総会の研究報告とシンポジウムについて述べ,続いて臨床心理学分野の主要5領域ごとに,7つの学会誌に掲載された65本の学術論文の内容と意義について論じた。選定にあたり,国民の心の健康の保持増進に役立つもの,社会的に周知する意義のあるものを基準とした。そして,臨床心理学の研究において,心の健康の理解と探索のためには,「獲得と受容」「個と集団の相互作用の健全化」「心身の安全と主体性の保障」の3つの観点が重要であることを述べた。

  • ―障害観と研究者の立場性に着目して―
    栗田 季佳
    原稿種別: I わが国の教育心理学の研究動向と展望
    2020 年 59 巻 p. 92-106
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル フリー

     本論文では,過去5年間の『教育心理学研究』に掲載された特別支援教育に関連する論文を中心に,心理学にみられる障害観を考察し,インクルーシブ教育に向けた教育心理学の課題を述べた。特別支援教育をテーマとする近年の教育心理学研究は,(1)アセスメント,(2)困難が生じる心理プロセスの解明,(3)カウンセリング,(4)介入プログラムの実施と効果検証に分類された。心理学研究においては,問題と関連する説明力の高い個人の内的な安定的特性として障害(あるいは特別支援の対象となる特性)を扱っており,実証主義的方法論に基づく個人モデル的な障害観であることが示唆された。障害は心理学における心のモデルや研究方法と関係しており,心理学的な状況や環境に埋め込まれたものであって,特定の個人に由来するわけではないことを指摘した。排除されないインクルーシブ教育において,状況や場に着目する学習理論,研究者の三人称性,研究者自身の差別という課題と向き合う必要性がある。

  • 本田 真大
    原稿種別: I わが国の教育心理学の研究動向と展望
    2020 年 59 巻 p. 107-115
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル フリー

     本稿は2018年7月から2019年6月までに日本で発表された学校心理学領域の研究動向を概観し,援助要請の視点から課題を検討することを目的とする。学校心理学の中核概念である心理教育的援助サービスが子どもたちの「学校生活の質」の向上に貢献するためには援助要請の視点が重要である。そこで,一次的援助サービスと援助要請に関する研究動向を中心に展望した。展望の結果,当該年度の研究では心理面,社会面,学習面の研究が多く,進路面と健康面の研究が少なかった。一次的援助サービスの研究では多様なニーズに応えるプログラムの効果検証が行われていることが示唆された。一方,援助要請に関する研究は少なく,一次的援助サービス及び二次的・三次的援助サービスの中で援助要請の視点を加えた研究上の課題を論じた。

  • ―「測定・評価・研究法」分野における最近の研究動向から―
    光永 悠彦
    原稿種別: I わが国の教育心理学の研究動向と展望
    2020 年 59 巻 p. 116-127
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル フリー

     本稿は2018年7月から2019年6月の1年間を中心とした「測定・評価・研究法」に関連する研究成果について,その動向をまとめた。そのうえで,今後の教育測定学や教育評価の研究が,新しい大学入試制度の導入に代表される,大規模なテストの制度設計にどのように役立てられるかについて,一つの指針を示すことを目的とした。新しい高大接続のための仕組みとして導入が予定されていた,大学入学のための共通テストに英語4技能入試や記述式を導入する試みが,導入を目前にして再考を迫られている今,これまで発表されてきた「心理尺度構成」「測定法に関する方法論的検討」「テストに関連する応用・実践研究」「その他,測定・評価・研究法に関連する研究」の諸論考から,テストで測られる構成概念の必要性の議論や,測定方法の実現可能性に関する議論を充実させることと,教育測定関連の研究環境の充実や新しい分析手法の検討が今後重要になることを指摘した。

II 展望
  • ―世界の学校心理学の研究動向から―
    飯田 順子
    原稿種別: II 展望
    2020 年 59 巻 p. 128-143
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル フリー

     本稿では,世界の学校心理学の研究動向を明らかにするため,最近3年間に国際学校心理学会の学会誌に掲載された文献のレビューを行った。そして,抽出された64編の論文について,調査対象国の地域と研究方法,研究テーマのそれぞれの傾向を明らかにした。結果から以下のような傾向が見られた:(1)学校心理学の研究がこれまで研究が少なかった国や地域に広がりつつある,(2)“文化”に焦点を当てた研究の存在感が高まっている,(3)心理教育的援助サービスの各段階に対応する介入が見られる,(4)心理職の役割が国の教育情勢や文化に強く影響を受ける。最後に国際比較研究を行う意義や教育心理学の役割について言及した。

  • 岡田 猛, 縣 拓充
    原稿種別: II 展望
    2020 年 59 巻 p. 144-169
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル フリー

     芸術は,多様な動物の中でも,我々ヒトのみがその営為を行っている活動である。それゆえに,芸術を取り巻く活動の理解と支援に向けた研究からは,創造,表現,イマジネーション,触発,シンボルによるコミュニケーション,あるいは学習といった現象の我々に固有の特徴について,本質的な示唆がもたらされる可能性がある。本論文は,主にこの10年の間に報告された,芸術表現の創造と鑑賞,ならびにその学びに焦点を当てた心理学的研究を概観するものである。芸術創造のメカニズムに関しては,特に認知的なアプローチから国内でも様々な知見が得られている。特にアイデアの生成や展開,身体的スキルやわざ,あるいは表現者としての熟達に関わる研究には豊かな蓄積がある。また鑑賞に関わる研究も,脳神経科学の発展も助けとなり,近年ますます活発に行われている。他方で芸術に関わる学習や教育を扱った研究は,実践レベルでは多様な展開が見られるものの,心理学者が関わることは多くない。今後は,現状ではあまり繫がっていない,芸術表現の創造と鑑賞に関わる知見と,その学びや触発を促すことを目的とした実践とが,有機的に結びついていくことが期待される。

III 教育心理学と実践活動
  • 梅崎 高行
    原稿種別: III 教育心理学と実践活動
    2020 年 59 巻 p. 170-190
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル フリー

     本稿ではスポーツ活動を,「する」,「みる/しる」,「ささえる」の3つの関わり方から把握した。また,スポーツ活動に関わる人々の発達を,児童期以前,青年期,成人期以降の3つのライフステージで区分した。この3×3の9象限において,参加継続などの肯定的側面と,離脱などの否定的側面2つの視座により,2009―2019年に発刊されたスポーツ活動における動機づけ研究を整理した。先行研究の通覧により,理論ベースの研究は自己決定理論と達成目標理論を援用するものが中心であり,1980年代から続く傾向が確認された。今後の研究課題として,(1)蓄積された知見を実社会に活かすプロジェクトの実施,(2)横断・遡及的な研究からプロスペクティブ・デザインによる研究への移行,そして,(3)参加継続か離脱かの2択を超えて,達成不能な課題に対峙した際の“新たな選択”への注目,以上3点が考えられた。

  • 栗田 佳代子
    原稿種別: III 教育心理学と実践活動
    2020 年 59 巻 p. 191-208
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル フリー

     2019年8月より,大学院設置基準が改正され,大学院生のための教育研修が努力義務化されることとなった。大学院の教育研修はいわゆるプレFDといわれ,従来の大学院教員準備プログラムに加えてTA制度もそのトレーニング機会となりうる。しかし,プレFDは普及の途上にあり,現在も各大学で試行錯誤が続いている。本稿では,今後のプレFDの有意義な普及と定着に寄与することを目的に,まず,答申などにみられる制度的な背景について概観し,次に,TA制度についてふれ,その特徴について概観し,さらに大学教員準備プログラムに関して,全体的な特徴とプログラムごとの特色を整理した。そして,それらを踏まえた上で,今後の課題を提示した。

IV 討論
  • ―説明研究からみた現状と課題―
    山本 博樹, 深谷 達史, 高垣 マユミ, 比留間 太白, 小野瀬 雅人
    原稿種別: IV 討論
    2020 年 59 巻 p. 209-230
    発行日: 2020/03/30
    公開日: 2020/11/03
    ジャーナル フリー
    電子付録

     2020年度より順次実施の学習指導要領からは「主体的・対話的で深い学び」が目指されることになる。これに対して,教師や生徒同士の説明実践に期待が寄せられるが,説明とは説き手の「説く」と受け手の「明らかになる」から成る言語活動だったはずである。ところが,一方的に「説く」だけで決して受け手自身が「明らかに」ならない言語活動が授業に紛れ込むことがある。説明という言語活動の特徴や構造を取り違えたり,短絡的に「深い学び」に直結すると誤解する場面に出会ったりもする。実は,説明活動は受け手の「明」に関わる認識論上の難題を含むのであり,これに対する教育心理学サイドの貢献を時に振り返る機会があってもよい。ここから児童生徒の「深い学び」を実現する説明実践が耕されていくからである。そこで,本論文では,説明の原義に由来する難題に研究者がいかに立ち向かってきたかを振り返り,説明実践に対する教育心理学の貢献を議論したい。想定した論点は以下の3点である。(1)説き手である教師や児童生徒は受け手の理解不振を把握できているか(論点1),(2)同じく受け手の理解不振を本当に改善できているか(論点2),また受け手の理解不振の把握・改善を基点とした説明力の育成は進んでいるか(論点3),である。

V 日本教育心理学会第61回総会
準備委員会企画シンポジウム
研究委員会企画シンポジウム
VI ハラスメント防止委員会企画シンポジウム
VII 日本教育心理学会 公開シンポジウム
VIII 第54回(2018年度)城戸奨励賞
IX 第17回(2018年度)優秀論文賞
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