2024 年 63 巻 p. 161-176
本稿は,これまでの教師研究の重要知見と近年の教師研究の動向を紐解くことで,教師の仕事の本質を明晰化し,教師の専門性開発の方向定位を明確化する。その上で,教員養成フラッグシップ大学の指定を受けた福井大学の構想を事例検討する。教師研究はこれまで,教師の行動・認知過程研究から教師の専門性の中核に省察的実践を定位し,教師の情動・動機づけ研究から教師の専門性の相互作用性を明晰化した。そして,教師の学習・発達研究により教師の専門性開発における協働性の重要性が提起され,「協創する専門職」として教職が再定位される。そして,福井大学の教員養成フラッグシップ大学構想は,教職大学院の学校拠点・長期実践プロジェクト,教育学部の省察的実践の長期漸成サイクルコアプロジェクト,教員研修の実践省察の組織化と学校-教育委員会-地域-大学のネットワーク,を多重に組織化する。この事例から,大学は教師の省察的実践と協創を支えるカリキュラムと組織を構築し,教師研究は教師の省察的実践と協創を支える新知見・理論を生成する必要が示された。