アレルギー
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ヒヨコ喘息の2例
根本 俊和林 しげよ山田 衛近藤 忠徳小林 節雄七条 小次郎
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1971 年 20 巻 9 号 p. 686-693,751-75

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抄録

最近われわれはニワトリのひなの羽毛と関連のある喘息発作をきたす2症例について, 各種アレルギー学的検索を行なったところ, これらの例がヒヨコの羽毛を起因抗原とする吸入性アレルギー性喘息であることを確かめえたので, ヒヨコ喘息と命名しここに報告する.症例1.60才, 男, 孵化場長.昭和41年より孵化場にはいると咳嗽に続いて呼吸困難発作をきたすことに気づくようになった.また, 昭和45年12月ヒヨコ羽毛の付着したビニールを取り扱い, 大量の羽毛細片を吸いこんだ直後, 著明な呼吸困難発作をおこしたことがあった.症例2.50才, 女, 主婦.昭和36年より秋になると呼吸困難発作をおこしていたが, 数年前よりヒヨコ舎に隣接しており, ヒヨコの羽毛が多量に飛散してくる物干場で仕事をすると, 呼吸困難発作をおこしやすいことに気づいた.これら2例の喘息発作がヒヨコ羽毛と関連があるのではないかと考え, ヒヨコ羽毛の抽出液を用い, 皮内反応, 眼反応を行なったところ明らかな陽性を示した.また吸入誘発試験もヒヨコ羽毛の抽出液の吸入により2例とも明らかな喘息発作をおこした.つぎにこれら2例の血清を用いたPrausnitz-Kustner反応でもヒヨコ羽毛に対応するreaginを証明しえた.以上の諸検査から, これら2例がヒヨコ羽毛を起因抗原とする吸入性アレルギー性喘息であると考えられた.一定の職業に従事することによって発症する職業性アレルギー性喘息が最近注目されてきており, 当教室で報告したコンニャク喘息をはじめ種々の職業性喘息が知られている.ここに報告したヒヨコ喘息も職業性喘息の1新種であると考えられる.

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© 1971 日本アレルギー学会
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