【背景・目的】食物アレルギーを有する児童・生徒数は増加傾向にあるが,学校給食における学校教職員の課題や負担は明らかになっていない.食物アレルギー対応を行う教職員のアンメットニーズを明らかにすることを目的にした.
【方法】宮城県内の600の小中学校に郵送で書面によるアンケート調査を実施した.
【結果】169校より回答を得た.食物アレルギーの有病率は5.6%,エピペンⓇ所持率は0.36%だった.教職員が食物アレルギーの給食対応に関して感じる問題は,「食物アレルギー児の増加」,「原因食品の多様化」が多く,その他「除去する食品の不明確性」,「職員・保護者・医師との連携不足」といった医療提供側で改善しうる要因も挙げられていた.自由記載では業務量の多さや,間違いや見逃しが許されない精神的な負担を訴える記載が多かった.
【結語】安全な給食が求められる一方で,対応する教職員が相当の負担を抱えている状況が明らかになった.今後は負担軽減も並行して検討される必要があり,持続可能な給食対応のシステム構築が求められる.
【目的】これまで食物アレルギー児を対象としたQuality of Life(QOL)尺度には本邦で開発されたものが存在しなかった.今回,養育者が回答する児の日本版QOL質問票を開発した.
【方法】食物アレルギー児の養育者を対象に,QOLに関連したことを自由記載方式で収集し全59問の一次質問票を作成した.一次質問票で調査を行いその回答結果を因子分析し,全9問から成る3歳から15歳の児の養育者を対象とした二次質問票を作成した.二次質問票,食物アレルギー関連QOL尺度であるFAQLQ-PF,小児包括的健康関連QOL尺度であるKINDLの3者を養育者に回答してもらい,二次質問票の妥当性を検証した.
【結果】延べ342名の養育者から有効回答が得られた.二次質問票とFAQLQ-PFとの相関係数は0.765(p<0.001),KINDLとの相関係数は-0.358(p<0.001)といずれも有意な相関関係を示した.また,アナフィラキシーの既往,アドレナリン自己注射製剤の所持,鶏卵アレルギー,ならびに牛乳アレルギーがある症例でQOLの悪化がみられた.
【結語】妥当性を備えた,日本語版の養育者が回答する食物アレルギー児のQOL質問票を開発することができた.
今回,米が原因と考えられる食物依存性運動誘発アナフィラキシー(Food-dependent exercise-induced anaphylaxis:FDEIA)の14歳女子を経験した.本症例ではFDEIAが疑われるエピソードの既往が4回あったが,本人の判断で病院は受診していなかった.5回目の症状出現時に近医よりFDEIAを疑われ当院へ紹介された.病歴聴取から各エピソードに米のみが共通して含まれており,米によるFDEIAを疑い精査した.皮膚プリックテストの結果は,ぬかや精白米などで陽性であり,精白米摂取後の運動負荷試験では,アナフィラキシー症状が誘発され,精白米によるFDEIAと診断した.イムノブロットでは,患者血清中に14-16kDaの米ぬかタンパク質に反応するImmunoglobulin E抗体の存在が確認された.イムノブロット阻害試験では,患者血清が反応した米ぬかのタンパク質が精白米や無洗米にも存在することが示唆され,本症例は無洗米や米粉においてもFDEIAを発症する可能性があるため,玄米や精白米と同様に除去指導を行った.