アレルギー
Online ISSN : 1347-7935
Print ISSN : 0021-4884
ISSN-L : 0021-4884
鼻咽腔刺激による下部食道括約筋弛緩と気管支拡張の同時出現Nonadrenergic Noncholinergic Inhibitory Nerve System賦活の可能性
市村 登寿吉原 重美浅井 秀実兵頭 春夫
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 35 巻 4 号 p. 295-300

詳細
抄録

鼻咽腔刺激(rhinopharyngeal stimulation, Rp.S)は小児の喘息発作を約15秒後に緩解ないし減弱させる.一方, 非発作小児では, 極めて稀に, Rp.S後にpeak expiratory flow rateの増加が起こらないこともある.ヒトの気道には交感神経系の直接支配はないとされているので, 上記の成績は, Rp.Sが迷走神経中のnonadrenergic noncholinergic inhibitory nerve (NANCIN) systemを活性化する可能性を示唆していると考えられる.もしこの推測が正しければ, Rp.Sは下部食道括約筋をも同時に支配しているNANCINを活性化するはずである.本研究はこの仮説の正しさを証明するために行われた.発作時の4例を含む気管支喘息小児10例にSch-1000吸入およびatropine皮下注の前処置後, Rp.S前後に立位および臥位にてバリウム食道造影を行った.video収録された画像から, 食道通過開始時間および同終了時間を測定し, さらに両者の差を滞留時間として算出し, Rp.S前後の変化を推計学的に判定した.これらの時間は, 立位および臥位ともに, Rp.S後に有意に短縮された.よって, Rp.SがNANCIN systemを特異的に活性化する可能性が明らかにされた.

著者関連情報
© 1986 日本アレルギー学会
前の記事 次の記事
feedback
Top