アレルギー
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食物アレルギーの診断における抗原誘発直腸粘膜細胞診の有用性
本間 季里河野 陽一平野 清美下条 直樹鈴木 宏星岡 明新美 仁男
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1992 年 41 巻 7 号 p. 749-756

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抄録

食物アレルギーが疑われたが, 詳細な問診, RAST法による特異IgE抗体の測定などからは確定診断ができなかった患児8名に対して直腸粘膜細胞診を指標とした抗原誘発試験を施行した。すなわち, 経直腸的あるいは経口的に抗原を負荷し, 抗原負荷前および負荷後48時間まで経時的に直腸に綿棒を挿入して直腸粘膜を採取し, 肥満細胞, 好酸球および臨床症状の出現を観察した. 経直腸的に抗原を負荷する直腸誘発試験は患者に均一の条件で抗原を負荷することができることより, 抗原の誘発方法は基本的に直腸誘発試験によった. しかし, 直腸誘発試験では反応が弱く臨床症状も認めない症例に関しては引き続き経口的に抗原を負荷する経口誘発試験を施行した. その結果, 以下の事実が判明した. (1) 今回の直腸粘膜細胞診を指標とした抗原誘発試験では, 即時型アレルギー反応だけでなく, その後に認められる反応も確認することができた. (2) 好酸球だけでなく, 肥満細胞の出現を観察することができ, アレルギー反応の指標として有用であった. (3) RAST法による特異IgE抗体が陰性の患児においても直腸粘膜細胞診で肥満細胞, 好酸球の出現が認められ, 対応する臨床症状が出現した症例もあった. (4) MA-1ミルクなどRAST法では測定が不可能な抗原に対するアレルギー反応もin vivoの本検査により確認することが可能であった. (5) 今回の抗原誘発試験では, 臨床症状に対応する抗原に対して好酸球, 肥満細胞が出現し, 機械的な刺激による非特異的な反応は認められなかった. 以上のことから, 今回の直腸粘膜細胞診を指標とした抗原誘発試験は, アレルギー反応が起こる局所である直腸粘膜を用いたin vivoにおける食物アレルギーの客観的な診断法として, 極めて有用と考えられた.

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© 1992 日本アレルギー学会
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