アレルギー
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気管支喘息小児の末梢血リンパ球におけるダニ抗原特異的IL2反応性誘導に与える漢方方剤:柴朴湯, 小青竜湯, 及び柴苓湯の処理効果及びその比較検討
野間 剛中島 忠川野 豊吉沢 いづみ冠木 智之馬場 実
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1996 年 45 巻 5 号 p. 494-503

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抄録

特異抗原刺激により活性化されたT細胞のIL2(interleukin2)に対する反応性の獲得は, アレルギー疾患の病因抗原の検索や病勢の把握に有用である. 気管支喘息小児末梢血リンパ球のダニ抗原特異的IL2誘導に与える抗アレルギー漢方方剤, 柴朴湯, 小青竜湯,及び柴苓湯の, in vitroでの処理効果について比較検討をおこなった. 柴朴湯では3×10^<-2>〜3×10^1μg/mlの濃度で処理することにより, 11例中8例(73%)の処理においてIL2反応性の抑制を認めた. 小青竜湯では,3×10^1μg/mlの濃度で処理することにより10例中6例(60%)の症例で抑制を認めたが, その抑制頻度は柴朴湯に比較して低かった. 柴苓湯では, 検査した1×10^<-6>〜1×10^1μg/ml濃度のうち1×10^<-2>μg/mlの濃度で抑制作用を認めたが, その抑制は, 35%(6/17)と他剤に比較してその頻度と程度が低かった. これらの抑制作用は, Con Aにより誘導される反応では認められなかった. また, PPDにより誘導される反応は, 小青竜湯では抑制作用は認められなかったが, 柴朴湯, 柴苓湯において認められた. これらの方剤の標的細胞はいずれも抗原提示細胞であったが, 柴苓湯ではT細胞にも作用して抑制する働きが存在した. いずれも, これらの方剤のもつ軽度の免疫抑制作用により, 抗原特異的IL2反応性が抑制されると考えられたが, 各薬剤とも, 方剤を構成する生薬の組合わせとその濃度により, 作用効果が少しずつ異なると考えられた. また, いずれの薬剤も高濃度で抑制作用が低下したが, この反応は, むしろ漢方方剤に含まれる各生薬成分が, 抗原提示細胞を介して, あるいは, 機序は明らかではないが直接的に, T細胞を活性化する作用による可能性が示唆された.

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© 1996 日本アレルギー学会
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