日本学校心理士会年報
Online ISSN : 2758-6588
Print ISSN : 2185-4602
実践論文
オンライン居場所支援が不登校の子どもの行動や思考の変容に与える影響
櫻井 裕子
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2022 年 15 巻 p. 90-98

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抄録

本研究は,不登校状態のA 児(小3男児)を対象に双方向性のあるオンライン居場所支援を試み,それが彼の行動と思考,不登校状態にどのように影響を与えるのかについて分析,検討を行ったものである。また対面支援が主である不登校支援において,オンライン居場所支援の有効性についても明らかにすることを目的としている。オンライン居場所におけるA 児とスタッフとの相互行為の観察や保護者へのインタビュー結果から,A児の行動の変容という側面では人間関係の回復や形成,向社会的行動の増加が確認された。また思考の変容という側面では,他者からの肯定的反応がA児の自己イメージを否定的なものから肯定的なものへと変容させ,自身に対して様々な可能性を見出すことを可能にしていたということも明らかになった。以上のことからオンライン居場所支援は,従来の対面支援と同様に子ども達の人間関係を回復,形成することで子どもの自己可能性感覚を形成し,彼らが外界へと飛び出していく際の足場となることが可能であると考察する。

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© 2022 日本学校心理士会
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