2023 年 42 巻 3 号 p. 123-131
近年,文化巡礼路が大いに発展を遂げており,これは過疎集落や社会全体の幸福にとって好ましい徴候を示している。文化巡礼路は、持続可能な発展の触媒となり、「地域」という共通善から始まる意味の提供者となる構造的要素を持っている。その文化的・経済的意義は疑う余地がないが,政治的意義についてはほとんど知られていない。イタリア2件,ヨーロッパ1件の計3件の事例を調査した結果,個々の地域や経済セクターのレベルで結ばれた協定を特徴とするメソ・コーポラティズム・モデルが,貴重な示唆を与えてくれることがわかった。これらの事例では、第三セクターに端を発する中核組織(キャリア・ネットワーク)が、これらの巡礼路を調整し、推進している。この組織は,ツアーオペレーターや小さな村々の代表の地位を独占しているわけではないが,限界的な農村の状況においては,行政が進んで厳格な契約体制に入るような権威ある代弁者としての役割を果たしている。この好循環は、巡礼路の標識の設置や維持管理を公共が負担し,小規模な商業・文化活動の活性化を民間や非営利セクターが担うことから成っている。
(和訳文責:中野・井上(編集委員))